beacon

攻守ともに機能せず…永井への依存度の高さが裏目に

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.7 ロンドン五輪準決勝 日本1-3メキシコ ロンドン]

 負傷の影響がなかったとは言い切れない。強行先発したFW永井謙佑はフル出場。1トップで先発し、後半途中からはサイドに回った。前線から追いかけ回し、攻撃ではカウンターの起点を担う。しかし、その動きにいつものキレはなく、運動量も上がり切らなかった。

「昨日の状態はよくなかったけど、朝起きたら昨日の治療が効いていて、行けると思った」。4日の準々決勝・エジプト戦(3-0)で先制点を決めながら相手DFと接触し、左太腿を打撲。負傷交代を強いられ、中2日の準決勝へ治療に専念してきた。

 関塚隆監督は「すべての動きをチェックして大丈夫だった。少し痛みはあっただろうが、頭から行けるところまで行こうと」と説明。「ただ、メキシコはスペースを押さえながら(永井が)消された印象だった。メキシコの方が今日の試合では1枚上手だった」と振り返った。

 全体に動きが重かったのは永井だけではない。連戦の影響も確かにあっただろう。それでも故障を抱える永井を最後までピッチに残したのは、永井のスピードによる一発に懸けたのかもしれない。しかし、そうした期待もこの日の永井には残念ながら重荷だった。

 準々決勝までに5得点を記録している日本だが、そのうち3点はセットプレーからで、残り2点は速攻から永井が決めたもの。良くも悪くも攻守に渡る永井への依存度の高さが、準決勝という舞台で裏目に出た。DF鈴木大輔は「なかなか前からの守備がハマらなかった。メキシコはサイドを使って回してくるのがうまかった。状況に応じて守備の仕方に変化を与えられればよかったけど……」と悔やむ。

 本大会直前の7月21日に親善試合で日本に1-2で敗れていたメキシコは日本を研究し、その対策に余念がなかった。ボランチのMFカルロス・サルシドが最終ラインに下がり、3バック気味に両SBを高い位置に押し出し、日本のプレッシャーをかわす。永井にスペースを与えず、FW大津祐樹は厳しくマークされた。永井、MF東慶悟ら攻撃陣から始まる日本の守備がこの日は“無力化”された。

「チーム全体で動けないと、こういうサッカーになる」。そう指摘した永井は「もっとダイナミックな仕掛けが必要だった。相手にブロックをつくられて、なかなかシュートを打てなかった」と言った。連動したプレッシングから高い位置でボールを奪い、カウンターでスペースを突く。しかし、相手に引かれ、スペースのない状況では攻撃が手詰まりだった。

 1-0の前半31分にはセットプレーから今大会初失点。後半20分には逆転を許し、初めてビハインドの展開となった。「チームとして大会を通じて初めての失点で、ショックもあったかもしれない。これまでずっと自分たちがリードする展開で、追いかける展開がなくて、予選でもそういう試合がなかったから……」。自分たちのサッカーができないときに、どうするのか。英国入り後に現在の形が出来上がったとはいえ、守備も攻撃も臨機応変さと言える“幅”がなかった。

「自分たちが次に進むために、大事な試合になったと思う。率直にメキシコはうまかった」。永井はそう言って前を向く。「見習って、3位決定戦に行きたい」。10日の3位決定戦の相手は韓国に決まった。永遠のライバルとの銅メダルを懸けた最終決戦。中2日という短期間でどう修正し、どこまでコンディションを回復できるか。ここまで来たら最後は気持ちの勝負だ。

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
ロンドン五輪特集ページ

TOP