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“W杯王手弾”の岡崎「自分の中でも本当に自信につながる」

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[11.14 W杯アジア最終予選 オマーン1-2日本 マスカット]

 紅白の彩りで満員にふくれあがったスルタン・カブース・スタジアムはすさまじい盛り上がりを見せていた。W杯アジア予選で6戦無敗を誇るホームで後半32分に1-1としたオマーンは、たたみかけるように日本に襲いかかっていた。

 中東でのアウェー。かつて数々の「まさか」を演出されてきた状況で、けれども、FW岡崎慎司(シュツットガルト)はひるまなかった。ゴールを決めることに全神経を集中させた。

 終了のときが刻々と迫る後半44分。左サイドを駆け上がったDF酒井高徳がクロスを上げる。PA内には2列目に上がっていたMF遠藤保仁。そのとき、ひらめいた。

「(酒井)高徳がいい仕掛けをして、ヤットさん(遠藤)のところにボールがいったとき、これはちょっと触るなと思った。触るとあそこらへんにこぼれると思って入った」

 遠藤の鮮やかなヒールパスに、ファーサイドの岡崎はアクロバティック的な身のこなしで突っ込み、左足を合わせた。泥臭い、彼らしいシュート。日本がホーム不敗のオマーンに勝ち越した瞬間だった。

「今まで大事なところで決め切れていなかった自分もいたので、こういう我慢する試合で最後のところでゴールを決められたことは自分の中でも本当に自信になる」。背番号9は胸を張った。
 
 最後まで勝ち点3を狙いにいく貪欲な姿勢が生んだ勝利だった。1-1とされたあと、ザッケローニ監督が投入したのは守備的なイメージのあるボランチの細貝萌。試合状況とスコア、そしてピッチ内の選手の特徴と配置から、岡崎が感じたのは「カウンター対策をしつつ、それでもヤットさんが前にいるということは、僕とかが裏を狙えるということ。長友や高徳も仕掛けられる。(酒井)宏樹もいる。ヤットさんがパサーになって、あとはみんなが流動的に動いて、クロスまで持っていってゴールを決めるという流れ」ということだった。

 そして何より、自身の胸で強く沸き上がってきたのは勝利への執念だ。「ここからだなと思いましたね。勝負は、ここから自分たちがどれだけ耐えて、もう一度勝ち越しを狙えるかだと」

 左足親指骨折で10月の欧州遠征の代表メンバーから漏れたときは「ケガをしているときは代表に行けず、寂しかった」という。試合前日は「サッカーに飢えているし、代表としてプレーすることを誇りに思う。あしたは先制点を決めて勢いをつけたい」と意気込んでいた。

 先制点はFW清武弘嗣に譲り、後半32分の相手FKの場面では壁に入った岡崎が跳び上がった下を抜けて同点ゴールを決められてしまった。ところが終わってみれば何よりも貴重な決勝ゴールを決めていた。

「最後まで引かず、びびらず、自分たちのサッカーができたことで勝ち越せた。予選は油断できないけど、ここまで最低限のことはできている」。ゴール前に迫力をもたらす男は、満足そうに笑みを浮かべた。

(取材・文 矢内由美子)
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