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逆風を団結に変えた日本代表 「自分たちは同じ方向を向いている」

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[11.16 国際親善試合 日本2-2オランダ ゲンク]

 逆風をバネに団結した。3戦全敗に終わったコンフェデレーションズ杯以降、なかなか結果の出ない日本代表に対する論調は徐々に批判の声が強まってきていた。メディアではザッケローニ監督の解任論も飛び出し、監督と選手の意見の不一致や、レギュラー組と控え組のモチベーションの差なども指摘された。そんな不穏なムードを象徴するような光景が、試合前のスタンドに広がった。

「3月まで試合0!?強化プランの見直しを」
「アジア王者の誇りはどこに?」
「日本に伝わる必死さがあるか?」
「日の丸の誇り・重みは?」
「結果を出している国内組より結果・出場をしてない海外組の方が大事?」
「ZACさん海外組が全て?」

 結果の出ないチームを叱咤し、ザッケローニ監督の采配に疑問を投げかけ、日本サッカー協会への不満も訴える数々の横断幕。試合前のウォーミングアップ中に掲げられたサポーターからの“メッセージ”を選手も目にしないはずがなかった。

「まったく気にならないといったら嘘になる」。報道陣から横断幕について聞かれたFW岡崎慎司(マインツ)はそう切り出し、思いを打ち明けた。

「まったく気にならないといったら嘘になるけど、自分たちはチームとして揺るがない結束があるし、それはサポーターも同じ気持ちだと僕は思っている」

 日本代表に勝ってほしいからこそ、W杯での好成績を期待しているからこその叱咤激励。「ああいうことを書かれても、みんなW杯で勝ちたいという思いは一緒だと思うので、その気持ちを自分たちがプレーで表現すればいいだけ。不安は感じなかったし、いい方向にいけばみんな賛同してくれるので、僕らはプレーで表現すればいいと思っていた」。オランダ相手に良いサッカー、良い結果を出すことで、その声に応えたい。試合前の“異常事態”が、選手の闘志をより一層かき立てたのは間違いない。

 選手の結束、チームの団結力。その重要性は、10年の南アフリカW杯を経験している岡崎自身、だれよりも痛感している。12年ぶりの国際Aマッチ4連敗で臨んだ南アフリカW杯。どん底状態だったチームは事前キャンプ地のスイス・サースフェーで選手ミーティングを行い、チームは一つの方向にまとまり、自国開催以外のW杯で初のベスト16進出を果たした。

「僕は前回のW杯前にもこういうことを経験している。前回のときの結束には僕も生で参加していたし、目の前で見てきたので、そういうのをつないでいく人間になっていきたい」

 チームの戦術変更もあり、南アフリカW杯直前まで1トップのレギュラーを務めていた岡崎は本大会では控えに甘んじた。先発を外され、南アフリカW杯の4試合はいずれも途中出場。拭い切れない悔しさを味わいながらも、だからこそチームが一つになることの大切さを身を持って体感した男の言葉には説得力がこもる。

「それはこれからも一緒で、このたった1試合で自分たちの目指すものは変わらないし、結束力を大事にしたい。何を言われても自分たちは同じ方向を向いていると思っているし、それはサポーターも一緒だと思う。日本国民が応援してくれていると思っているし、自分たちはプレーで表現することで日本代表はつながっていると思う」

 試合内容や結果よりも、チームの進むべき道があらためて見えたことがオランダ戦の最大の収穫かもしれない。キャプテンのMF長谷部誠(ニュルンベルク)は言う。「今日はオランダと引き分けたというより、チーム全体が同じ意識を持って戦えたところに意味がある。でも、これを継続していかないと意味はない」。次戦は中2日で19日にベルギーと対戦する。「どん底だったとは思っていなかったけど、やはりうまくいかないという意識があったからこそ、ジャンプするときがある。そういう意味でまだ1試合。次の試合が重要になる」と力を込めた。

(取材・文 西山紘平)

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