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「苦しい思いをしたけど…」病乗り越え200日ぶり先発の山岸が1G1A

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[12.12 クラブW杯5位決定戦 蔚山現代2-3広島 豊田]

 万感の思いがあった。同点ゴールを含む1ゴール1アシストの活躍を見せたサンフレッチェ広島のMF山岸智にとって公式戦の先発は5月26日のJ1札幌戦(3-1)以来、約半年ぶり。札幌戦を最後に体調不良で離脱し、7月に右下肢血流障害と診断された。10月27日のG大阪戦(1-1)で長期離脱から復帰したものの、限られた時間での途中出場が続いていたサイドアタッカーが今季最終戦で200日ぶりの先発出場を果たし、チームの逆転勝利に貢献した。

「個人的にもスタートから出るのは病気をしてから初めて。半年以上空いての試合だったし、なんとかチームの流れを崩さず、そこから自分の良さを出していければと思っていた」

 0-1の前半35分、MF森崎浩司のFKに合わせたFW佐藤寿人のヘディングシュートをGKが弾いたところに詰め、右足で押し込んだ。「ゴールと言っても触るだけだった。なんとも言えないけど、ああいうところに詰めておくことが得点につながる」。後半11分には山岸の左サイドからのピンポイントクロスに走り込んだ佐藤が左足でわずかに触れ、ゴールに流し込んだ。

「みんなは僕が2点取ったんじゃないかと言ってくれたけど、僕自身はそこにこだわるのではなく、意思統一してゴールにつながったことがよかったし、ヒサ(佐藤寿人)のゴールでよかったと思う」

 山岸を先発に抜擢した森保一監督は「病気を克服して戦列に復帰して、交代で試合に出てもらうことが多かったが、短い時間でも彼自身のクオリティーの高さ、得点につながるチャンスをつくるところを見せてくれていた」と指摘。中2日で3試合が続く過密日程を考慮し、「フレッシュな選手を入れることでチームを勢いに乗せようと思い、今日のメンバー構成を考えた」と、山岸を含め準々決勝・アルアハリ戦から先発4人を入れ替えた。

「ヤマ(山岸)はスタートから出るだけのパフォーマンスを練習から見せていたので使った。チームが疲れていた状況で彼の良さを出してくれたし、チャンスをつくってくれて、得点にも絡んでくれた」。手放しで称えた指揮官の期待に応えた山岸は「病気をしてから練習試合でも90分やっていなかった。正直、自分でも大丈夫なのかなという感情はあった」と、素直な思いも打ち明ける。

「でも、やるからにはしっかりやらないといけないと思っていたし、最後、勝って終わりたかった。今年に関しては苦しい思いをしたけど、最後の最後で監督にチャンスをもらって、そのチャンスに応えられたことはものすごくうれしい」

 チームがJリーグ初優勝を果たす歓喜を味わった一方、病と闘いながら苦しんだシーズンだった。しかし、それも最後に報われた。「いい試合だったと思うし、僕自身、まだまだできると思っている。レギュラー争いをしながらチームの底上げをして、チームがまたレベルアップしていければ」。MF石川大徳やMF清水航平といった若手も台頭した2012年。来年5月には30歳になる山岸はそう言って、決意を新たにしていた。

(取材・文 西山紘平)

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