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サプライズは川口!!W杯に臨む23人の戦士が決定!

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 サプライズはGK川口能活(磐田)だった。W杯南アフリカ大会に臨む日本代表メンバー23人が10日、発表された。岡田武史監督が壇上で読み上げた23人のリスト。「GK。楢崎、川島、川口」。3番目に読み上げられた名前に、会場からはどよめきが起こった。

 「川口には第3GKという難しいポジションだが、彼のリーダーシップ、他の選手からも一目置かれる存在が、W杯という長丁場を戦っていく上で必要だと判断した」

 最終的に23人を決めたのは今朝だったという。代表スタッフに伝えたのもこの日午前10時45分から始まったスタッフ会議だった。しかし、川口だけには前日夜の時点で、直接電話し、招集の可能性を伝えていた。

 川口は昨年9月に右脛骨を骨折し、長期離脱を余儀なくされた。今年に入って練習に復帰し、4月25日の練習試合で実戦復帰も果たしたものの、いまだ公式戦出場はない。岡田監督は川口の状態を最終チェックするため、前日9日に磐田の練習試合へスタッフを派遣していた。

 ところが、川口は試合直前に内転筋に張りがあるため、出場を回避。「GKとしてプレーできないというなら、選ばなかった。本人がプレーに自信がないなら難しい」。だから、直接本人に確認した。代表メンバー発表前日に監督が自ら選手に電話するという異例の手段を取った。

 岡田監督は前夜の電話でのやり取りを詳細に明かした。

岡田監督「練習試合に出なかったようだが、プレーに不安があるのか? 感覚が戻っていないのか?」

川口「それはまったくないです」

岡田監督「それなら候補として考えていいのか? 第3GKという形でもやれるか?」

川口「チームの力になれるのだったら、力になりたいです」

 あくまで大事を取っての欠場で、クラブのスタッフからもナビスコ杯では復帰可能だという情報は聞いていた。ならば「プレーできないなら」という考えは必要ない。そして、岡田監督は川口招集を決断した。

 突如、思い立ったサプライズではない。指揮官にとっては、以前から温めてきた“腹案”でもあった。

 「昔、レギュラーを外して、それでもやっていけるのかという話をしたこともある。それからしばらくはサブでいた。そのあと、メンバーからも外した。ただ、僕はずっと川口を見ていた。どういうスタンスでサッカーをするのか。そういうのに耐えて、代表を目指してくれるのなら可能性はあると思っていた。ケガがあって、どうなるかと思っていたが、プレーできるなら可能性はあると。いろんな苦労をしてきた中で、彼の変化を見て決めた」

 岡田ジャパン初陣となった08年1月のチリ戦に先発するなど、当初は正GK候補の一番手としてコンスタントに出場していた。ところが、08年3月26日のW杯アジア3次予選・バーレーン戦で川口のミスもあって0-1で敗れると、それ以降は正GKの座を楢崎に譲った。楢崎が負傷中だった08年11月のシリア戦、カタール戦には先発したが、09年1月のアジア杯予選では川島が先発。そして、09年1月28日のバーレーン戦を最後に、招集すらもされなくなった。

 その中でも常に川口に関する情報収集は続けてきた。「いろんな情報源がある。代表とクラブのスタッフ間、トレーナー間の情報交換。どういう態度で練習して、どう自己管理をしているのか。そういう中でふてくされずに、投げ出すことなくやっていると聞いていた」。どんな立場になっても腐ることなく、自分のプレーを向上させる努力を続け、チームのためにプレーしようという献身的な姿を見せ続ける。そうした「変化」を感じることができたのだという。

 「W杯のような長丁場の戦いではいろんなことがある。その中でチームをまとめるというか、世界で勝っていこうと思ったら、選手が“自分たちでやるんだ”とならないといけない。僕から言われてやっているようじゃダメ。そういう雰囲気の舵取りを期待している。チームが自分たちでやるんだと。そういうムードに持っていくことが大切。俺に言われたからプレスにいくとか、俺に言われたから戻るんじゃなくて、選手が必要だと思ってやる。それを引っ張る役目を担ってほしい」

 98年フランス大会、02年日韓大会、06年ドイツ大会。日本が過去出場したすべてのW杯を知り、98年、06年は守護神としてプレーした。国際Aマッチ116試合の出場。その豊富な経験は、代え難いものだった。

 「上の選手が相談する相手がいないのかなというのは感じていた。自分たちで苦しんでいるようなところがあった」。DF中澤佑二、MF中村俊輔らチームを引っ張る立場にいるベテラン選手の良き相談相手となり、彼らの負担も軽減する。「ゲームキャプテンとチームキャプテンを分けることも考えている」とも言う。川口招集にはさまざまな意味がある。

 ベスト4という壮大な目標を掲げる岡田監督。「目標はまったく変わっていない。目標を達成するために、まずグループリーグを突破しないといけないし、一番大事なのは初戦のカメルーンになる。そこに頭が集中しているし、そこから次のステップにいける。この23人でそういうことが実現できると思っている」。6月14日のグループリーグ初戦・カメルーン戦まで、あと35日。23人の戦士が決まり、いよいよ日本代表が臨戦態勢に入った。

(取材・文 西山紘平)

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