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W杯メンバー発表、岡田監督コメント全文

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 W杯南アフリカ大会に臨む日本代表メンバー23人が10日、発表された。
以下、岡田武史監督の会見要旨及び会見後の囲み取材でのコメント

―23人を決めた今の率直な気持ちは?
「いよいよあとはW杯本大会に向けて最高の準備をして、戦いに行くんだというすっきりとした気持ちでいる」

―選考基準は?
「チームが目標に向かって勝つために、いろんなシチュエーションを想定して、どういう状況ならだれが必要なのかを考えた。力のある選手を上から23人選んだわけではない」

―GKに川口が入ったが?
「川口には第3GKという難しいポジションだが、彼のリーダーシップ、他の選手からも一目置かれる存在が、W杯という長丁場を戦っていく上で必要だと判断した」

―DFには岩政が入ったが?
「それぞれの選手をいろんな状況に合わせて使い分けていきたいと思っている。これまでは中澤と闘莉王を中心に4バックでやってきたが、もし2人がケガをするというときには他のやり方も考えないといけない。また、勝ち点を取るとき、相手が最後にパワープレーやセットプレーで狙ってくるかもしれない。それを想定して考えた」

―MFには外れた選手にもたくさん有力候補がいたが?
「こういう状況になったら、どの選手が生きるか。その役割がだぶらないようにした。いろんな状況に対応できるように考えた」

―石川、小笠原、小野も候補だったと思うが?
「僕は候補を発表したことはない。この23人を今、発表した。ここに名前のないJリーガーはたくさんいる。その選手に対するコメントは避けたい」

―FWでは矢野が入ったが?
「彼の豊富な運動量、フィジカルの強さに期待している。例えば同点のときに彼を入れることで、セットプレーの守備や前線での追い回し、カウンターアタックからの飛び出しなどが生きる。荒さはあるが、フィジカル、スピード、運動量に期待して決めた」

―いつメンバーは100%決まったのか?
「最終的には今日の朝。朝起きて、自分に問いかけて、メンバーを見つめ直して、これでいこうと決めた」

―スタッフにはいつ伝えたのか?
「11時からスタッフ会議の予定だったが、みんな早く来て、10時45分ぐらいに集まったので、そこの時点で伝えた。これは議論ではなく、“決めた”とスタッフに伝えた。時間も5分ぐらいで終わった。これ以上議論することはないということで、一方的に伝えた」

―どこで悩んだか?
「すべてのポジションで悩んだ。何人かの候補でどっちがいいか迷ったところもある。ただ、上か下かはだれにも決められないこと。チームの中での役割を考え、最後は感覚的なものでこいつにしようと決断した」

―W杯ではどんなサッカーを見せたいか?
「日本人がW杯で勝つために、アグレッシブな攻守に渡って全員でハードワークするサッカーをしたい」

―サポーターへメッセージを。
「今日23人を発表して、もちろんケガ人が出て変更する可能性もあるが、この23人をベースに南アフリカでいいサッカー、日本人らしいサッカーをしたい。是非応援してください」

―川口はケガで試合にも出ていない状況だが?
「今、ケガで試合に出ていないのは稲本、玉田、川口の3人だと思う。ケガ人の状況は常に追跡している。川口は練習試合もやっていて、ほぼ元のプレーに戻っている。次のナビスコ杯あたりから公式戦にも出れると聞いていたので、代表が集合するときには十分にプレーできると判断した。彼のチームにおける存在感は、若い選手、経験のない選手を引っ張っていくことができる。チームキャプテンもやってきた選手なので、そういうところに期待している」

―W杯でどうやって点を取るか?残り1ヵ月で一番の強化ポイントは?
「どうやって点を取るかと言われても、どんな形でも取れればいい。我々の武器であるセットプレーは大事にしたいし、あとは早い攻撃ができないと、守られたときにはカメルーン、オランダ、デンマークの守備ブロックを崩すのは難しい。高い位置で取ってからの早い攻撃を念頭に置いている。
 いくつかの修正ポイントはある。守備面ではカウンターへの対処、カウンターを受けないためにどうするか、ロングボールへの対処。そういうものを本番までの3試合の中でチェックしていきたい」

―最近岡田監督からベスト4という言葉を聞かなくなったが、W杯では何を目指すのか?
「目標はまったく変わっていない。目標を達成するために、まずグループリーグを突破しないといけないし、一番大事なのは初戦のカメルーンになる。そこに頭が集中しているし、そこから次のステップにいける。この23人でそういうことが実現できると思っている」

―次のW杯につながるような世代別の選考も考えたのか?
「今回はそういう次の世代に経験させるために選んだ選手はひとりもいない。あくまで今大会で勝つために必要な選手を23人選んだ。ただ、サポーティングスタッフとして南アフリカに帯同させ、経験させる選手もいるので、技術委員会と相談して、そちらの方で経験させたい」

―キャプテンは中澤なのか川口なのか?
「今、頭の中には構想がある。ゲームキャプテンとチームキャプテンを分けることも考えている。ただ、選手に言う前に発表するというのは妥当ではない。選手が集まってから選手に伝えて、それからお話したい」

―岡田監督にとって2度目のW杯だが、リベンジの思いは?
「前回のリベンジのために臨むわけではない。今大会、日本というチームがどうしたら世界で通用するのかを考えている。勇気を持ってチャレンジしようと。リベンジは考えてない。2度目のW杯ということでプラスがあるとすれば、チームマネジメントの面で1ヵ月以上の戦いになると、こういうことが起こるんだなとか、こうしないとサブの選手はコンディションを保てないなとか、そういうことぐらい」

―日本人が世界でもここだけは負けない部分は?
「日本の今のチームのいいところはやはり、表現は悪いが、ハエがたかるように何度も何度もチャレンジするところだと思う。運動量、攻守の切り替えの早さ、組織としてのまとまりが、私のチームの長所だと思う」

―本田に期待することは?
「本田は正直、オランダからロシアに行って、かなりプレーが変わった。本人とも話して、そのポイントも聞いた。彼にはものすごく大きな期待をしている。彼が成長したことで、このチームにとって得点という可能性が大きくなった。そういう意味で、彼には得点に絡むプレーを期待している」

―森本はこのチームでの経験が少ないが?
「彼の特徴はフィジカルの強さ、ゴール前の強引さ。そういうものに期待している。スタートで出るかどうかは何も決めていないが、ゴールに向かう姿勢、ゴールを取ることに期待している。彼のランニングは後ろに下がるより、ゴールに向かって走る量が多い選手。うちのチームにとってはとてもインパクトがあること」

―グループリーグの星勘定はどう考えているか?以前は全試合で勝ち点を取りたいと話していたが?
「考えはあまり変わってない。なぜ第1戦が大事かというと、やはり日本はアウェーのW杯で1勝もしていない国。どこで勝ち点3を取ってもいいのだが、選手のメンタル面、チームの状況を考えたとき、初戦で勝ち点を取らないと、チームがメンタル的にダウンする懸念を持っている。オランダは世界のトップレベルだが、まったく勝ち点を取る可能性がないかというと、難しいかもしれないが、可能性はあると思っているし、それにチャレンジするのが我々の仕事だと思っている」

―W杯までの3試合でチェックしたいことは?
「修正点はいくつか挙がっている。今までの失点、得点をすべて分析して、前からプレスして取られた失点はない。ボールを取られてポンと裏に出されて、圧倒的なスピードで走られたときにどうするか。まず韓国戦で1つか2つチェックしたい。その上で次の2試合でチェックポイントを検討したい」

―大久保はケガもあったが?
「大久保は日本に戻ってきてから、なかなか本領の出ない試合もあったが、ここに来て本来の野性味というか、そういうのが徐々に戻ってきているなと。1対1のボール際で勝てなかったら、どれだけボールを回しても点は取れない。彼は一瞬のスピード、当たりの強さを持っている」

―パックアップメンバーは何人選んで何人南アフリカに連れていくのか?
「若手のサポーティングスタッフと、(FIFAへの予備登録30人の中の)残り7人は別物と考えてほしい。連れていくのは23人と、若手4人ぐらい。その中に30人に入っている選手が含まれる可能性もあるが、全員が30人に入っているかというと、入っていない可能性もある」

―川口はケガがなければ入れようと前から考えていたのか?
「昔、レギュラーを外して、それでもやっていけるのかという話をしたこともある。それからしばらくはサブでいた。そのあと、メンバーからも外した。ただ、僕はずっと川口を見ていた。どういうスタンスでサッカーをするのか。そういうのに耐えて、代表を目指してくれるのなら可能性はあると思っていた。ケガがあって、どうなるかと思っていたが、プレーできるなら可能性はあると。いろんな苦労をしてきた中で、彼の変化を見て決めた」

―W杯後に契約延長のオファーがあったら受けるか?
「僕らの仕事はそんな先のことまで考えてられないけど、おそらくやることはないと思っている。それ以上のコメントは避けさせていただきたい」

―川口とは話をしたのか?
「前日夜に電話をした。伝えたんじゃなくて、こういう形でもやってもらえるかを聞いた」

―反応は?
「力になりたいと言ってくれた」

―どんな変化があったと思ったのか?
「いろんな情報源がある。代表とクラブのスタッフ間、トレーナー間の情報交換。どういう態度で練習して、どう自己管理をしているのか。そういう中でふてくされずに、投げ出すことなくやっていると聞いていた」

―チームの士気を高められると?
「GKとしてプレーできないなら選ばなかった。W杯のような長丁場の戦いではいろんなことがある。その中でチームをまとめるというか、世界で勝っていこうと思ったら、選手が“自分たちでやるんだ”とならないといけない。僕から言われてやっているようじゃダメ。そういう雰囲気の舵取りを期待している」

―川口がいない時期もあったが?
「上の選手が相談する相手がいないのかなというのは感じていた。自分たちで苦しんでいるようなところがあった」

―前回のドイツW杯でチーム内に不協和音があったことも考慮した?
「僕はドイツ大会のことは本当に知らない。皆さんからの情報だけで。それを考えたわけではなく、日本が世界の強豪に勝つためには、チームが自分たちでやるんだと。そういうムードに持っていくことが大切。俺に言われたからプレスにいくとか、俺に言われたから戻るんじゃなくて、選手が必要だと思ってやる。それを引っ張る役目を担ってほしい」

―川口は驚いていた?
「ちょっとは驚いていたみたいだけど、短い時間だったし、分からない」

―これまでも電話したりしていた?
「電話もしてないし、試合に行って話もしていない。今回電話したのは、昨日の練習試合に川口が出なかったから。直前に内転筋に張りがあったということだったけど、本人がプレーに自信がないなら難しい。磐田の監督とか周りは問題ないと言っていたけど、本人に不安があるなら難しいと思って、電話して聞いた。候補として考えていいかとは聞いたが、メンバーに入れるとは言ってない」

―川口が大丈夫だと聞いて安堵した?
「ダメだったらちゃんと考えていたし、そこはそんな大きなヤマじゃなかった」

―一番悩んだところはFW?
「そうでもないんだけど」

―川口が必要だと考えるようになったのはいつから?
「アジアではなく、W杯という1ヵ月の長丁場の戦いで、自分たちから動き出すような、そういうのが必要。最終的にどこかでそういう形に持っていかないといけないとはずっと考えていた。そのときはだれが必要かということまでは考えてなかった」

―もし川口がたまたま電話に出れなかったらメンバーに入れなかった?
「周りからの情報はあったし、一番大事なのはプレーが万全にできて、感覚が戻っているのか、不安はないのかということだった。磐田の監督、コーチからは戻っていると聞いていたので、それで決めていたかもしれない」

―スタッフも驚いていた?
「おっと思ったかもしれないけど、バリエーションとして考えていることは事前に言っていた。昨日の練習試合に出てなかったから、ないんだと思っていたかもしれないけど」

―修正ポイントも選考に影響した?
「そのために入れた選手はいない。アジアと違って、W杯ではこういう試合展開になるだろうと。そういうときにこいつが役立つかなと」

―サイドでは石川にも期待していたが?
「大久保、松井がいれば、彼らもサイドでプレーできる。彼らがいないときのバリエーションとして考えていた」

(取材・文 西山紘平)

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