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迷いを捨てた本田、"らしさ"を取り戻した決勝弾

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[6.14 W杯グループリーグE組 日本1-0カメルーン フリー・ステイト]

 やはりこの男がやってくれた。MF本田圭佑だ。前半39分、MF遠藤保仁が右サイドのMF松井大輔に展開。松井は縦に仕掛けるのではなく、左足に持ち替えてクロスを送る。ゴール前に飛び込んだMF大久保嘉人の動きにつられるように右サイドバックのエムビアとセンターバックのヌクルが重なる。ボールは逆サイドでフリーで待ち構えていた本田のもとへ流れてきた。

 「ボールがよかった。あとは落ち着いて決めるだけというシーン。ただ、最近はそういうシーンで外していた。本番の大事な試合で決められてよかった」。正確なトラップから左足を振る。GKのポジショニングを冷静に見極めて放ったシュートはきれいにニアサイドを破った。

 「(クロスから)ファーサイドを狙っていたわけじゃない。来たらいいなと思っていたら、いい形ですべてがうまくいった。(大久保)嘉人さんが前で競ってくれて、相手が見事にかぶってくれた。トラップがよくて、意外と落ち着いて蹴れた」

 ゴール直後はバックスタンド側へ走って行った。ところが、突然の“軌道修正”。ベンチ前にいた控え選手の歓喜の輪へ飛び込んだ。

 実は試合前にMF中村憲剛から「点を取ったらこっちに来いよ」と約束されていたのだという。「“来いよ”って話を憲剛くんから言われてて。喜び出して5秒後に思い出して、方向転換した」と笑っていた。

 不慣れな1トップでの先発だった。10日に行われたジンバブエとの練習試合で30分間プレーしただけのポジション。本人にも迷いはあった。

 「オレはストライカーじゃないし、ストライカー的なことをやってもしょうがない。初心に帰るというか、自分にできることをやって、相手の嫌なことをしようと。中盤に下がってボールを受けたり、本来の自分のプレーをやろうと思った」

 吹っ切れていた。「1トップとしてのプレーではなく、自分のプレーをした」。それが結果的にゴールにもつながった。「昨日、一昨日と“楽しんでプレーしよう”とメンタルコントロールしていた。あとはなるようになると」。いい意味で開き直っていた。

 次戦は19日、オランダと激突する。「2点目を取れなかったし、課題が見えたことはよかった。オランダはこんな簡単じゃない。いいスタートを切れたけど、大事なのはこれから」と力説した。

 岡田武史監督は「オランダはフリーでDFラインからパスを出させると、かなり精度の高いボールが来る。そういう意味でそれに対応できる戦い方、選手でいかないといけない」と話しており、オランダ戦はFW岡崎慎司の1トップに戻り、本田は本来の中盤に下がる可能性が高い。

 自分らしさを取り戻した本田が再び中盤に君臨する。相手は強敵だ。それでも今の勢いならば、そして本田がいれば、番狂わせも不可能じゃない。

<写真>1トップで奮闘し値千金のゴールを決めた本田

(取材・文 西山紘平)

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