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「W杯とは違うところを見せたかった」、香川の一撃で因縁マッチに終止符

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[9.4 キリンチャレンジ杯 日本1-0パラグアイ 日産ス]

 6万5157人の大観衆の前で、新たなスターが誕生した。MF香川真司(ドルトムント)がザックジャパン第1号ゴールを決めるとともに、南アフリカW杯でベスト8の夢を阻まれたパラグアイにリベンジを果たす決勝点を叩き込んだ。

 後半19分、相手を押し込みながら攻めあぐね、横にパスを回していたときだった。FW岡崎慎司が後ろに下がる動きでCBを引き付ける。ぽっかり空いたスペースに飛び込む香川の動きをMF中村憲剛は見逃さなかった。電光石火のスルーパス。ワンタッチでボールをスペースに運んだ香川が右足を振り抜くと、シュートはGKの手を弾き、右ポストをかすめてゴールに吸い込まれた。

 「憲剛さんからいいボールが入って、自分らしいゴールだった。イメージ通りです。ああいうのはいつも狙っているし、得意な形だった」

 自画自賛の先制点。このひと蹴りがW杯から続く因縁マッチに“ケリ”を付けた。6月29日の決勝トーナメント1回戦。パラグアイとの死闘は0-0のまま延長戦を含めた120分間を戦って決着が付かず、PK戦の末に敗れた。

 サポートメンバーとしてチームに帯同していた香川には試合に出場する資格もなく、スタンドからただ見守ることしかできなかった。「悔しさはあったし、見ているサッカーも守備的で。W杯ではしょうがない部分もあるけど、今日は違うところを見せたかった」と力説した。

 大会直前に軌道修正した岡田ジャパンはMF本田圭佑を1トップに置き、MF阿部勇樹をアンカーに置いた守備的なサッカーでグループリーグを突破。しかし、同時にそれだけではベスト16が限界であることを見せつけられたのがパラグアイ戦だった。

 サポートメンバーとはいえ、チームの中で練習していた香川は集中力を切らすことなく、黙々と汗を流した。そのキレのあるのプレーぶりに「なぜ香川がサポートメンバーなんだ」という声も漏れた。自分の存在感を見せつけるのにパラグアイは格好の相手だった。

 たまりにたまったうっ憤は、W杯後に合流したドルトムントでぶつけた。ELプレーオフで2得点を挙げるなどチーム内で確固たる地位を築き、ブンデスリーガでもトップ下として開幕から2試合連続で先発。第2節のシュツットガルト戦では2点に絡み、3-0の初勝利に貢献した。

 ドイツでの好調ぶりはこの日も健在だった。再三のドリブル突破で相手守備陣を切り裂き、スペースへの飛び出しでもパラグアイを揺さぶった。

 「自分ではどこが成長したかは分からないけど、充実しているし、サッカーへの姿勢とか、そういうものは日々強まっている。それしかやることはないし、雑音に惑わされず、自分のサッカーをやっていきたい」

 FW森本貴幸を頂点に、香川、本田、MF松井大輔が2列目に並ぶ“欧州カルテット”が魅せた可能性。初陣で因縁の相手に雪辱を果たした新生ジャパンの中心に、香川がいた。

<写真>日本代表MF香川
(取材・文 西山紘平)

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