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「いい意味でサプライズ」、ザックは満足感強調も3-4-3は一時“棚上げ”へ

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[6.7 キリン杯 日本0-0チェコ 日産ス]

 90分間、3-4-3を貫いた。試合後のアルベルト・ザッケローニ監督の表情には充実感も漂っていた。「今日の選手の出来には満足している。いい意味でサプライズだった」。2試合連続のスコアレスドロー。前半のみ3-4-3を採用した1日のペルー戦(0-0)に続き、計135分間にわたってゴールを奪えなかったが、チームがはっきりと進歩していることを実感できたようだ。

「選手たちの出来には満足しているし、期待以上の出来だったと思っている。ペルー戦に比べるとかなりよくなった。ここ数日間の練習だけでここまでできるのはたやすいことではない」

 ペルー戦では両サイドハーフが高い位置を取れず、5バック気味になる時間帯もあったが、この日はその問題もほぼ解消された。積極的な守備で高い位置からプレッシャーをかけ、ボールを奪う。3バックの中央を務めたDF今野泰幸も「積極的にラインを上げて、同サイドに寄せてという守り方をした。ハマッた感はちょっとあった」と胸を張る。危険なシーンはカウンターとセットプレーぐらいで、被シュートも6本。最終ラインが3枚から4枚、4枚から3枚へと流動的に変化し、ポジショニングやマークの受け渡しも、ペルー戦と比べれば、格段によくなった。

 課題は2戦連続ノーゴールの攻撃面か。指揮官は「シュートも11本打っているし、最後のところで正確性を欠く、あるいはGKの素晴らしいセーブに阻まれた。11本のシュートは少なくない。最後のコントロールミスなどでシュートまで至らなかったのも含めれば17本ぐらいあったと思う」と強調したが、3-4-3の利点を生かした厚みのある攻撃はほとんど見られず、決定機もわずかだった。

 シュート11本のうち5本は直接FK(FW本田圭佑が4本、MF遠藤保仁が1本)で、3本はミドルシュート。決定的と呼べるのは後半7分、左CKをつないでDF吉田麻也がゴール正面から放ったヘディングシュートと、同33分、本田の左クロスをFW岡崎慎司が頭で叩き付けた場面ぐらいだった。吉田はゴール上に浮かし、岡崎のヘッドはGKチェフが好セーブ。ザッケローニ監督は「相手の素晴らしいGKを称賛しないといけない」と話したが、実際には相手GKを脅かす場面はほとんどなかった。

「数日でこれほどまでにできることは信じられない。他の国の選手で同じことをやったら、今日のような結果は出なかったと思う」

 指揮官がどこまで本音を語っているかは分からない。しかし、今野の「完璧とかは全然思ってない」、MF長谷部誠の「これで本番(W杯予選)も勝負すると言われたとき、絶対的な確信があるわけではない」という言葉の方が正直だろう。

 9月に始まるW杯アジア3次予選までに残されたテストマッチは8月10日の韓国戦(札幌ド)のみ。この日も「(3-4-3は)あくまで現時点ではオプションの一つ」とあらためてBプランであることを強調したザッケローニ監督は「この2試合、3-4-3を試すことでそれなりの成長を見せた。これは別のところに置いておいて、必要なときに取っておきます」と言った。韓国戦から再び4-2-3-1に戻すことを示唆した指揮官。3-4-3への挑戦は、消化不良のままいったん中断する。

[写真]チェコ戦に臨むザッケローニ監督(左)

(取材・文 西山紘平)

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