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家長が遠藤に代わり1536日ぶりAマッチ出場、「この相手に勝てないようでは厳しい」

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[6.7 キリン杯 日本0-0チェコ 日産ス]

 “期待のレフティー”がボランチデビューした。ザッケローニ監督から、本職の攻撃的MFやサイドFWではなく「セントラルミッドフィルダー」に指名されたMF家長昭博(マジョルカ)が、後半19分に同じく攻撃が持ち味のボランチ遠藤保仁(G大阪)に代わって登場。2007年3月24日のペルー戦以来、1536日ぶりに国際Aマッチで勇姿を見せた。

 中盤で独特のリズムでボールを運び、パスをつないだ。後半29分にはG大阪ジュニアユース時代からの盟友・FW本田圭佑が競ったこぼれ球を左足ミドル弾。相手DFに当ててしまったが、思い切りの良さを見せた。同41分には本田の横パスから前線へ走り込んだFW李忠成へループパス。わずかに合わなかったが、独創的なプレーで観衆を沸かせた。

 だが、かつて“和製メッシ”とも言われた天才の自己評価は厳しかった。「もっとできると思います。プレッシャーもなかったので、もう少しボールを前に運びたかった。反省点が多い。ドリブルでもう少しボールを運べればよかった」と口にした。見事なループパスについても「フリーなんでね、あまり評価できないです」と淡々としていた。

 4年以上の歳月を経てのAマッチ戦復帰だったが、これについても「普通ですね」と一言。本田圭佑と代表公式戦で一緒にプレーするのも2007年11月の北京五輪アジア最終予選サウジアラビア戦(国立)以来で、周囲はコラボレーションに注目したが、「フリーだったら、全部ボールを預けられたらいいと思っていた。楽しさもありますけど、もっともっと自分自身、いいプレーができると思う。まだまだ自分の力を出し切れなかった」と表情を緩めることはなかった。

 今年1月からマジョルカに移籍。世界最高のスペインリーグを経験したことで、より一層、理想も高くなっている。チェコは大型選手が多く、球際の強さを見せたが、家長は「あまり(チェコ選手は)強くなかった。自分たちにパスミスが多くて、崩せなかった」とサラリと言ってのけた。攻撃の活性化を期待されて出場しただけに、ゴールを導けなかったことが、悔しくてしょうがなかった。

「この相手に勝てないようでは厳しい。まだまだ個人的に力を上げないといけない。チームとして機能するのも大事ですけど、まだまだ個人技、個人能力を上げないといけない。何ぼ組織で戦っても、上では勝てない。代表にいないときのほうが1年を見ると長いので、チームで自分の力を上げないといけない」

 天才はやはり、求めているレベルが違う。攻撃的なボランチは現状、遠藤がかなり先を走るが、真似るのではなく、自分らしいプレーで追いつき、追い越すつもりでいる。この日、同タイプの本職ボランチMF柴崎晃誠(川崎F)は出番がなく、ザッケローニ監督が遠藤の後継者として、家長の“覚醒”に期待していることがわかる。“未完の大器”といわれ続ける天才レフティーが、大先輩・遠藤の牙城をどう崩していくのか。今後にますます注目が集まる。

[写真]不金全燃焼に終わった家長(中央)

(取材・文 近藤安弘)

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