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日本vsチェコ 試合後のザッケローニ監督会見要旨

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[6.7 キリン杯 日本0-0チェコ 日産ス]

 日本代表は7日、日産スタジアムでチェコ代表と対戦し、0-0で引き分けた。1日のペルー戦(0-0)に続いて3-4-3を採用したザックジャパン。この日は3-4-3を90分間継続し、攻守に一定の改善は見えたが、2試合連続の無得点に終わった。3チームが2分の勝ち点2(得点0、失点0)で並んだキリン杯。史上初となる3チームの同時優勝で幕を閉じた(日本は大会4連覇)。
以下、試合後の監督会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「日本が勝とうと、勝利に近づこうとチャレンジしたゲームだった。チェコに比べてゴールチャンスは多かったし、相手よりチャンスをつくれた。早いコンビネーション、遅いコンビネーションといろいろあったが、勝とうとする意識は出たと思う。選手たちの出来にも満足しているし、期待以上の出来だったと思っている。相手の素晴らしいGKを称賛しないといけない。あくまでこのシステムに関してはバリエーションの一つだと話してきたが、まだまだ始めたばかりで、よくなってくると期待している。ペルー戦に比べると、かなりよくなった。ここ数日間の練習だけでここまでできるのはたやすいことではないと思う」

―サイド攻撃が相手に警戒されてチャンスは中央からの方が多かった気がするが?
「サイド攻撃のときには、そのスピードが若干遅かったかなと思う。中央のときの方がスピードに乗ったプレーができた。試合前からバイタルエリアのところとサイドのところを狙っていたが、チェコがサイドのところをケアしてきたので、真ん中にスペースができた。相手のFW、もしくは左右のMFの高い位置にいる選手がかなり下がる形でうちの攻撃に対応してきた。ただ、その代わりに相手の攻撃的な選手を2人消すことができた。伊野波、吉田の2人がビルドアップに積極的に参加してくれたと思う」

―3-4-3のメリットはどこにあり、どういう相手に、どういう局面で使うのが有効だと思っているのか?
「他のシステムと同様にうまく理解して活用しないといけないが、それができたときにはバイタルエリアからサイドのところで1人がフリーになれる利点がある。4-2-3-1はまあまあできてきていると感じているが、日本の選手の特徴を見たとき、サイドにスピードと持久力を兼ね備えた選手が豊富で、FWもスピードのある人材が豊富だということで、このシステムが合っているのではないかと思っている。ただし、あくまでも現時点ではオプションの一つ。しかし、一つのシステムでずっとやり続ければ相手も研究してくるし、同じことをやり続けても成長はない。この2試合、3-4-3を試すことでそれなりの成長を見せたし、これは別のところに置いておいて、必要なときに取っておきます」

―前半の攻撃は練習のパターンにとらわれすぎているように見えたが、ハーフタイムの指示は? 日本の選手のメンタリティーとして、指示されたことしかやれなくなると言われることがあるが?
「日本人の選手の特徴には非常に満足している。私自身、今日やったシステムはよく理解しているつもりだが、数日でこれほどまでにできることは信じられない。こういったトライをする決断をしたのも、日本の選手の素晴らしい特長があったから。他の国の選手で同じことをやったら、今日のような結果は出なかったと思う。
 ここ数日、選手には詰め込み過ぎかというぐらい情報量を与えたが、スタートポジションのところと、最後にどういうイメージを描くかというところを特に話した。スタートポジションから最後のイメージを与えて、そこにどうやってたどり着くのかを具体的に話した。試合前に選手にも言ったが、『ここ数日で言ったことを全部やろうとするな』と。スタートポジションのところと最後のフィニッシュのところのイメージだけを持って、アプローチに関しては固執しないという話をした。当然、選手の中には練習でやったことを実践しようという気持ちがあったと思うので、考えすぎだというところがプレースピードを遅らせてしまったのかもしれないが、後半になってから、考えすぎのところもメンタルのところでフリーになり、その良さが出たのではないかと思う。
 ただ、個人的には前半の出来にも満足している。悪くなかったという印象を持っている。前半は緊張もあっただろうし、気負いもあっただろうから、それも原因だったと思う。何度も言うが、今日の選手の出来には満足しているし、いい意味でサプライズだったと思っている。プレースピードは大切で、その部分は数日(の練習)ではこれぐらいかなと思うが、攻撃でいい形、いいコンビネーションも出た。何回か最後のトラップのところでミスがあったり、紙一重のところで決められなかった」

―3-4-3は点を取りに行くときのオプションだと思うが、今日は90分間やって点を取れなかったのに満足できる理由は?
「結果とプレー内容は分けて考えることができる。個人的には親善試合ではプレー内容を重視しているし、私自身、勝ちたくなかったと言ったら嘘になるが、シュートも11本打っているし、最後のところで正確性を欠く、あるいはGKの素晴らしいセーブに阻まれた。11本のシュートは少なくないと思う。今日のチェコのようなフィジカルの強いDFラインに対してあそこまでできることは簡単ではない。シュートを11本打っているし、最後のコントロールミスなどでシュートまで至らなかったのも含めれば17本ぐらいあったと思う。私自身、勝ちたかったが、選手、チームが前の試合より成長したことに喜びを感じている」

―後半に入って本田がサイドではなく中にポジションを取っていたのは本田の判断か、それとも監督の指示か?
「私と本田の間で決めた。本田は頭のいい選手なので、サイドにスペースがなくて、真ん中にスペースがあることが分かっていた。自分がトップ下の位置に入りながら、岡崎を2トップの一角のように押し出すやり方をしてくれた。特に右サイドでバイタルに入ってくると、左足で素晴らしいものを持っているので、そこで前を向いたときに彼の素晴らしいところが出る。チェコのサイドのMF、FWが下がってまで対応しているのをきちんと把握して、真ん中のところにスペースができていることを理解していた。サイドのところではめられているとき、(中央から)縦にボールを入れるには、ある程度キープ力を持っている選手でないといけない。それに関して本田はうってつけの存在だった。本田の特長として、90分間消えないでプレーし続ける能力がある。サイドに張っているだけでなく、中に来ることは間違ってない。手元にデータはないが、たぶん本田が今日一番ボールに触った選手ではないかと思う」

―吉田、伊野波のポジションが大事だと思うが、あのポジションでどういう資質を求めているか? 今野を3バックの左右で使う考えは?
「左右の選手に求められる資質は、スピード、足元の技術があること、つまりビルドアップがきちんとできること、そして空中戦の強さの3つが挙げられると思う。今野に関しても、真ん中でうまくやっているように左右に入っても同様にできる資質を持っていると思う。今野はユーティリティーな選手で、3バックの真ん中、左右のほかにも、今日の内田、長谷部がやっていたポジションもできる。非常にユーティリティーで、個人的に彼を高く評価している」

―ペルー戦と比べてよくなったところは?
「ペルー戦ではほとんどいいところは出なかったが、それも2日間の練習では想定内だった。どこがよくなったかについては、チームをコンパクトに保ち、縦の意識が高まった。伊野波、吉田がボールを縦に入れた回数、岡崎、本田、李のところに入れた回数を見れば明らかだと思う。日本人選手の特長として、守備もできるし、ビルドアップにも参加できる能力を持っている。すべての日本人の選手にそういった資質は要求したいと思う。ペルー戦に比べると、今日は内田と長友が入ったポジションの選手が、ペルー戦ではオフザボールの動きというか、スペースに入ることができなかったが、今日はそれもできた。あとはもう少しクロスボールを入れてほしいなと思っていたが、相手の左右のサイドMFもかなり戻ってきていたので上げられなかったところと、上げられたのに上げなかったところもあった。ただ、相手のDFの高さを見ると、そういった考えもあるのかなと思う。ペルー戦に比べると、バイタルのところに多くボールが入った。ペルー戦に関しては縦への意識がなく、横パスに割く時間が長かったと思っている」

[写真]ザッケローニ監督

(取材・文 西山紘平)

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