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[MOM304]広島観音高FW下岡恭祐(3年)_頭脳派エースが決めた“計算ずく”の一撃

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.4 全日本ユース選手権1次R第1戦 広島観音高 1-1 市立船橋高 群馬]

 頭脳派のエースらしい“計算ずく”のゴールだった。タイミングよくサイドを突く広島観音はクロスを上げる場面は相手以上だったものの、その精度を欠き、また全国総体優勝の市立船橋の堅守にも苦戦。空中戦では相手の強力CBの前に劣勢となり、グラウンダーでボールを進めても最終ラインとボランチに挟み込まれ、なかなか最後の局面を破ることができなかった。1点ビハインドのまま残り時間は10分に。だが、この劣勢を10番FW下岡恭祐が一発で救った。

 「いいドリブルからいいシュートを打ったな、と思いました」。広島観音の畑喜美夫監督も賞賛したゴールが後半36分に生まれる。敵陣で相手ボールを奪ってドリブルを開始した下岡は「横にいるDFの前に入って、1対2の局面を1対1にしようと思った」と、右後方から併走する相手ボランチのランニングコースに蓋をするため、ゴールへ向かって直進するのではなく意図的に相手をブロック。DFと挟み込もうとする相手ボランチの存在を消すと、左前方から距離を詰めてくるDFよりも一瞬早く右足を振りぬく。決して強烈なシュートではなかったが、コントロールされたシュートはGKの指の先を抜けてそのままゴール左隅へと吸い込まれた。

 「(チャンスは多くないので)一発で決められるようにと考えていた。すごくうれしかった」と振り返る下岡は「全国舞台へ懸ける思い」を爆発させるように、ジャンプしたまま右手を突き上げる派手なガッツポーズ。そしてすぐさまチームメートの歓喜の輪に吸い込まれた。

 武器のドリブル、そして広島観音の特長である個々の高い判断力を最大限に生かした同点弾。この日「いい判断だと思うところが少ないな、と思っていた」という指揮官を喜ばせる頭脳的なドリブルとシュートだった。
 昨年の大会で活躍しファジアーノ岡山入りしたFW竹内翼のようにチームを勝たせるため、自分を一段階上のレベルに導くために必要なものは「1人でも点を取れること。高いレベルだと1人で打開しなければいけない。エースとしての自覚をもってやりたい」と語る下岡。この後、関東王者のFC東京U-18戦、北信越王者の富山一高戦と難敵との対戦が続くが、頭脳派エースは自らの足、頭で再びチームを救うつもりだ。

(取材・文 吉田太郎)

連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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