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[MOM360]東京VユースFW南秀仁(2年)_エースFWがスランプ脱出で2G1Aの大活躍!!

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.18 Jユースカップ予選L・Bグループ 東京Vユース3-1横浜FCユース 夢の島]

 苦しんだスランプの先につかんだものは大きい。東京ヴェルディユースのFW南秀仁は、この日の横浜FCユース戦で、2ゴール1アシストの全得点に絡む大活躍をみせた。0-1で迎えた前半28分、こぼれ球につめて同点弾を決めると、後半25分にはPKを冷静にゴール正面に突き刺し逆転弾。最後は“らしさ”の見える技ありの浮き球パスで、MF杉本竜土のゴールをアシストした。この日の南の活躍。そこにはスランプに苦しんでいた頃の姿はない。

 今夏は南にとって、大躍進のシーズンだった。8月22日にJ2第23節熊本戦でJデビュー。J2最年少ゴールにわずか2日と迫る17歳3ヵ月7日でデビュー戦ゴールを挙げて、その名を知らしめた。その後、トップチームにも帯同する過密日程の中で行われた、東京都サッカートーナメントの決勝では、途中交代を持ちかけた監督に「まだ出ます!」と直訴。延長戦までの120分間を戦い抜くと、決勝ゴールをお膳立て。この勝利でチームは優勝し、高校生チームとして東京都では史上初の天皇杯本選出場権を獲得。まさに順風満帆な日々が続いていた。

 しかし、天皇杯1回戦で駒澤大に敗れた後、あれだけの輝かしい日々が嘘のように、南は人生初のスランプに苦しむことになる。「天皇杯で負けてからは、燃え尽き症候群でした」。今でこそ笑って話せるが、当時の南のコンディションは、ただただ下降する一方だった。

 「イメージはしているけど、自分の思ったように体が動かない」ゴールからも見放され、高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権の決勝トーナメント1回戦では、横浜FMユース相手にまさかの0-4で敗戦。その後の試合では小さな故障が絶えず、全力を出し切れないことでメンタル面も打ちのめされる日々が続いた。

 しかし、そんな状況も自らの力で打ち破った。メンタルの弱さを指摘され、プレーに波があることを自覚。トップチームに呼ばれなくなったことも南を奮起させた。「学校があるからって理由で、トップに呼ばれないってことは、学校を休ませてまで、トップに呼ぶほどだと自分は思われてない。今の自分には足りないってこと」。そのために「今はユースでやれることをやろうと思って毎試合毎試合、気合を入れてます」と前を向き、目前の1試合1試合に集中。そして、ようやくスランプも脱出した。今試合でみせた活躍は本来の南の姿、それ以上のものだった。南の変化を楠瀬直木監督も「ムラがなくなってきた。ゴールに貪欲になって、相手に関係なくプレー出来ている」と称えた。

 南の良さは、どんな選手とプレーするときも同じように取り組み、またプレーする場を選ばないところにあるともいえる。MF高木善朗やMF小林祐希は常にトップでプレーすることを希望し、口にしていたが、南はまず目の前にいるチームメイトとともに戦い、チームのために点を取ること。そして勝利するためのプレーに専念する。だからこそ周りから「一緒にやりたい選手」と慕われて、信頼もされるのだろう。エースFWがようやく復活を果たした。今夏の快進撃、その再演のためには欠かせない要素が東京Vユースにまた一つ加わった。

(取材・文 片岡涼)

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