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[MOM371]横浜FMユースDF山田融(2年)_空回りから一転、強烈先制弾

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.23 Jユースカップ準決勝 横浜FMユース 2-0 東京Vユース 長居]

 「思い切ってやれ!」――指揮官の一声が縮こまっていた才能を覚醒させた。準決勝のヒーローは、準々決勝では出場機会のなかった左SB山田融だった。

 松橋力蔵監督は「左右で攻撃的に行って揺さぶりをかけることで、自分たちの良いときのサッカーをしようと思った」と、最終ラインの顔触れを変えた理由を明かした。つまり、山田の起用理由は、彼の攻撃力にあった。しかし、持ち味は発揮されていなかった。山田は序盤の心境を「準々決勝では試合に出られなくて、試合に出たらやってやるぞと思っていた。でも、(Jリーグでデビューしている小野)裕二君とかがいて、うまくやらなくちゃと思うところもあって委縮して、空回りしてしまった」と振り返る。

 向かって左へ攻める自チームの一番手前を走る山田の様子を、指揮官は見逃さなかった。「緊張して肩に力が入って、判断が遅かったり、中途半端に取られたりしていた。何かビビりながらやっているなと感じたので、失敗してもいいから思い切りやれよと言ったら、(すごいゴールが決まって)あら!っという感じ。言ってみるもんだなと思った」と、期待に応えた2年生DFの活躍に目を細めた。

 右サイドから細かいパスをつなぎ、逆サイドの高い位置でボールを受けた山田は、小刻みなドリブルから強烈なシュートを突き刺した。中学2年でSBに転向するまでは、FWやサイドハーフをやっていた。元々、周りを使ってプレーするタイプで、今も得意な形は「前に預けて高い位置でもらって、サイドでは勝負してセンタリング。シンプルなプレー」だという。目指す境地は、日本代表で活躍する長友佑都(チェゼーナ)。強心臓も見習いたいところだ。

 「シュートが決まったときは、何も見えなくなって、何も感じなくなった。打ったら入った、という感じ。いつもならパスをする場面だったけど、思い切ってやってこいと言われたので、やってやろうと思って試合に(気持ちが)入っていた。3年生のためにも一つでも多く試合をしたかったし、得点できたことは良かった。でも、ミスが多いし、パフォーマンスは良くない。決勝戦で機会があれば、しっかりやりたい。FC東京との決勝戦は、ゲームの入りから圧倒して、相手に『何もできなかった』と言わせたい。出場機会は貪欲に狙っていくけど、自分が出場できなくても勝てばいい」。

 献身的な姿勢と自信とのバランスはまだ不安定だが、秘めた能力の高さは示した。次なる一撃は、大舞台で見られるか、来年度へ持ち越しか。要注目だ。

(取材・文 平野貴也)

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