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[MOM72]流通経済大MF椎名伸志(1年)_「膝のケガで注目されただけ」の選手権から大学初Gで新たな一歩

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.19 関東大学1部第8節 流通経済大 1-1 駒澤大 西が丘]

 まるで矢のようにゴール前へと飛び込んできた背番号28の左足シュートが、堅守・駒澤大の壁を突き破った。

 1点を追う流通経済大は後半37分、主将のFW武藤雄樹(4年=武相高)と10番のベロカル・フランク(4年=青森山田高)の2人に代えて2年生FW古川大士(2年=流通経済大柏高)と注目ルーキーMF椎名伸志(青森山田高)をピッチへと送り出す。攻撃の軸である4年生2人を交代させる中野雄二監督の思い切った交代策に椎名が応えた。

 ファーストタッチから魅せた。投入直後、ゴールに背を向けた状態でパスを受けた椎名は、DFを背負いながらもダイレクトのチップキックでPAへパスを通す。「(チームは)サイドへパスを出すことはできていたけど、バイタル(エリア)に入ることができていなかった」と分析していたMFは、変化をつけたパスで駒大の守備網にいきなり穴を開けると40分だ。

 左クロスをファーサイドのFW征矢智和(3年=東京Vユース)が頭で折り返す。すると、「本当にいいボールを落としてもらった」と誰より早くボールへ反応した椎名が、得意の左足から弾丸ボレーをゴールへと叩き込んだ。1-1の引き分けに終わった試合後、逆転できなかったことを悔やんでいた椎名だったが、「結果を求められていると思っていた。あの場面で決められたことは自信になった」と表情を緩めていた。
 
 昨夏に負った左膝じん帯断裂から早期復帰を目指してきた影響で下半身の筋力が不足し、日本高校選抜の欧州遠征後はリハビリに努めてきた。トレーナーのOKが出て公式戦デビューを果たしたのが、16日の国士舘大戦。「レベルの高い中で練習できているし、今は楽しくてしょうがない」と喜びに満ち溢れている。そして公式戦出場2試合目で早速出した結果。無回転FKを打ち込むなどロスタイムを含めた約10分間のみの出場ながらも好プレー魅せた1年生MFに対し、指揮官が次戦での先発をほのめかす等、現在6位と不振の続くチームからの期待は高まっている。

 目標とする4年後のプロ入りへ向けて走り出した技巧派レフティー。1月の高校選手権では、青森山田高の大黒柱としてチームを青森県勢初の決勝へと導いたこともあり、さすがに注目度は高い。ただし椎名は「高校の時は膝のケガで注目をされただけで自分のプレーはよくなかった。チームに貢献できなかった。今は(流通経済大で)とにかくチームに貢献したい。自分に自信を持つことがチームのコンセプトだし、遠慮するつもりはない。チームはまだよくないけれど、自分が少しでも変えられたらいい」。万全のコンディションではなかった高校選手権から4ヵ月。“本当の実力”はこれから大学サッカーの舞台で披露する。

(取材・文 吉田太郎)

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