beacon

[MOM320]流通経済大柏MF吉田眞紀人(3年)_「見返したい」エースが死闘に決着つける

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.20 全日本ユース選手権決勝T1回戦 流通経済大柏高 2-1 市立船橋高 ひたちなか]

 1-1で迎えた延長後半10分、間違いなく大きなプレッシャーがかかっていただろうPKを流通経済大柏高(千葉)のエースMF吉田眞紀人は冷静に左足で決めた。因縁の千葉決戦に決着をつける決勝ゴール。50分ほど前に叩き込んだ鮮烈FKの際は静かに右手を突き上げるだけだった背番号14は、110分間の死闘の勝利を決める一撃がゴールを破ったのを確認すると左手を握り締めて雄たけびを挙げた。

 「市船はライバル。特別な気持ちで戦っていた。応援席の人とひとつになった瞬間があった」。それほど強い思いで戦っていた研ぎ澄まされた一戦。0-0で進んだ試合を動かしたのも吉田の左足だった。後半23分、右サイドで自らFKを獲得した吉田は「(GKとの駆け引きで)視線はニアに実際はファーを狙っていた。風が強かったので巻くのは計算できない。だからストレートで狙った」と思い切り左足を振りぬく。強烈な一撃はそれまで好守を見せていた市立船橋GK高橋諭の頭上を射抜き、ゴールへと突き刺さった。

 この日の2発はJ注目のエースが決めた「意地」のゴールでもあった。「点を2点取ることができた。自分は体力があまりないけれど、フル出場できて自分で決めて勝てたのは一番うれしい勝ち方」とライバル対決勝利を素直に喜んだ吉田だが、1-1で引き分けた1次ラウンドの浦和ユース戦では流れの中からシュートを打つことができず、試合後に本田裕一郎監督から厳しい言葉。怒りを抑えることができず、なだめようとするチームメートを振り切ってひとり会場を後にしていた。
 ただ、出場停止だった清水ユース戦を応援席から見て、出られない選手がどのような気持ちで出場しているメンバーを応援してくれているのか分かった。期待してくれている仲間のためにも絶対に妥協はしない。市立船橋戦はとにかくチームの勝利に貢献したいという気持ちで満ち溢れていた。その思いが自らを110分間走りきらせた。

 この日も流れの中からのゴールはなかったが、チームが勝ったことが一番。それに貢献できたことが何よりうれしかった。自分の価値を証明するためにも勝利が必要。「優勝して(監督を)見返したいです!」。指揮官の目に頼りなく映っていたエースは、残り3試合、日本一を勝ち取るために自分の力を最大限に発揮するつもりだ。

<写真>延長後半10分、決勝PKを決めた流通経済大柏MF吉田がガッツポーズ
(取材・文 吉田太郎)

全日本ユース2010特集
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

TOP