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[選手権]日章学園、理想の試合運びで1勝!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 宮城県工0-2日章学園 ニッパ球]

日章学園(宮崎)が前半に挙げた2点を守りきり宮城県工(宮城)を退けた。
1月3日の3回戦では優勝候補の静岡学園(静岡)と対戦する。

選手権初戦とは思えない、落ち着いた試合運びに自信が感じられた。
前半キックオフ直後から攻めあがると、FKのボールから1本、ミドルレンジから1本と、シュートを立て続けに打ってリズムをつかんだ。
早々と流れをものにしたことがゴールを呼び込んだ。前半18分に右CKからDF深山和哉(3年)が頭で合わせて先制すると、12分後にも直接FKからのボールをMF神田傑(3年)が押し込んで追加点。
ともにセットプレーからの得点だが、完全に押し込んでいた「流れ」が影響していた。

日章学園の早稲田一男監督が言う。
「前半はボールが動かせたし、いい時間帯にリスタートから点を取れることでゆとりが生まれた。前半はいろんな面で圧倒できた」
日章学園が再三相手ゴール前まで攻め入り、サイドを深くえぐるのに対し、宮城工はシュート0本、ほとんどの時間を自陣で守ることに費やさなければならなかった。

宮城工の宍戸清一監督が語る。
「相手の動き出しが早く対応できなかった。相手の危機管理能力が高いのはビデオなどを見ていてわかっていた」
0-2で迎えた後半、宮城工がどんな手を打ってくるかが注目された。

後半、宮城工はキャプテンのDF三浦慎之介(3年)を中盤に上げてきた。
「三浦は本来中盤の選手ですが、1,2年が多いこのチームでDFラインを統率してもらうためにCBに入ってもらっていました。でもリスクを負わなければいけない展開の時は上げるんです」(宍戸監督)
三浦がボールをおさめるようになったからか、宮城工が前半よりも前目でプレーする機会が増えた。FW山田康太(3年)がトップだけでなく中盤まで下がってボールを受け、ドリブルで持ち上がるなど、強引ぎみなプレーでチャンスを作る。この気合、獰猛さが日章学園から前半の流れを奪った。

後半はイーブン。しかし日章学園にはどこか相手を「いなす」余裕があった。
ボールに寄りたい宮城工に対し、日章学園はピッチを広く使ってボールを回す。どちらかのサイドに人が密集すればサイドチェンジ、プレスが厳しいと見れば無理せずGKにバックパスすることでポゼッション率を上げ、相手に焦りの感情をかきたてた。

計算高かったのはプレーだけではない。
「キャプテンのFW福満拓人(3年)を前半で代えたのは、昨日微熱があたので次のゲームに集中させる意味合いもありました。2点リードがあったので。後半は前がかりに行く必要はないといいました。普段は絶対にそんなこと言わないので、言い方が難しかったというか、選手たちには違和感を持たせてしまったかもしれませんが。だから後半、変わったのはどちらかというとうちの方かもしれません。
本来は前半のようなサッカーを80分するように言っているんですけどね」(早稲田監督)

後半、宮城工が仕掛けたのもあるが、日章学園もプレーを変えていたのだ。
それは次の試合が翌日にあるということも関係していた。日章学園が目指すのは「まず一勝」ではなく、先を見据えた戦いだ。
「正直力に自信を持っている。次の相手の静岡学園は完成度が高い。我々はチャレンジャーだが、今日の前半のようなサッカーを80分続ければある程度戦える自信はある」(早稲田監督)

短期間のうちにいくつもの試合を勝っていくには、大会をトータルでとらえる必要が出てくる。時には「省エネサッカー、ミスの少ないサッカー」で効率よく勝利を得ることも求められるのだ。
これでは目の前の一戦に集中していないようにも思えるが、後半気持ちを前面に出し襲い掛かってきた宮城工の勢いに飲み込まれないで0封する「したたか」さもちゃんと持っている。
宍戸監督が「2点ビハインドの後半、バランスを崩さなければいけない状況で、早めに1-2になっていれば試合は変わっていたかもしれない」と悔やんだその1点を与えないのも、また日章学園の強さだといえるだろう。

打倒・静岡学園。日章学園がジャイアントキリングを起こす準備を整えていた、のかどうかは次の試合の結果で判断したい。

[写真]追加点を決めた日章学園MF神田

(取材・文/伊藤亮)(写真協力 『高校サッカー年鑑』)


【特設】高校選手権2010

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