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川崎F・鄭がサポーターへ、母へ恩返し弾! 最終節に奇跡を起こす

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[11.28 J1第33節 川崎F1-0新潟 等々力]
 逆転Vへ負けられない一戦だった。プレッシャーがかかる中、勝負所でストライカーの意地が爆発した。後半25分、左サイドからFWジュニーニョのパスに反応したのはFW鄭大世だ。利き足とは逆の左足できっちりと決め、貴重な先制弾をゲット。3試合ぶりの今季13得点目は結果的に決勝弾となり、1-0勝利をもたらした。
 「大分戦で悔しい思いをして、優勝に向けて負けられない試合だった。メンタル的に難しく、楽な試合ではなかったけど、みんなの力で勝てた。勝ち点3では表現しきれないくらいの勝ち点3。首はつながった。大分戦、シュート0だった。今まで勝負所で決められていなかったけど、きょうは決められてよかった」
 ヒーローは試合後、ドーピング検査のため約2時間半遅れで、インタビューに訪れたが、充実感たっぷりの表情で現れた。前節、最下位の大分に0-1で敗れ、自力Vが消滅した。鄭大世はその試合でシュート0に終わり、ストライカーとして責任を感じていた。この日の新潟戦は、勝たなければいけない状況だった。大一番で大きな仕事をやってのけた。優勝戦線に生き残るのはもちろん、2位以上を確定させ、来季のACL出場権を確定させた。
 奮起する材料は他に2つあった。一つはサポーターだ。試合前、ホーム・等々力競技場の入り口付近から、これまでにない人数のサポーターが出迎えてくれた。鄭大世は「涙が出そうになった」という。MF中村憲剛も「入団して初めてのことだった。あれはテンションが上がった」というほどの熱いエール。燃えないわけにはいかなかった。
 そして、もう一つは母の李貞琴さんが応援に駆けつけてくれたことだ。前夜、自宅のある名古屋から上京し、この日の朝には手料理で振る舞ってくれた。白いご飯、持参した名古屋名物の赤味噌で作ったチゲ鍋、パスタ、キムチなど、母の愛が詰まった料理でパワーをつけた。「(ゴールを)喜んでくれたかな。親孝行できてよかった。家族が来ているときは(得点が)かなりの確率なんです」と表情を崩した。
 鹿島がG大阪に勝ったため、優勝争いは昨年と同様、最終節にまでもつれこんだ。勝ち点は鹿島が63で、川崎Fが61。得失点差は川崎Fが3上回っている。逆転優勝するためには、鹿島が浦和(埼玉)に引き分け以下になったうえで、川崎Fは勝たないといけない。
 昨年は川崎Fが大勝したうえで、鹿島が大量失点で負けないといけない状況だった。そして、鹿島の相手は浦和で、川崎Fの相手はJ2降格が決まった柏。昨年よりも状況が良いといえるかもしれない。
 「勝たないと何も始まらない。柏もホーム最終戦だから、気持ちを入った戦いをしてくるはず。うちはアウェーだけど、勝って終わりたい。1週間、いい準備をして臨みたい」と中村憲剛鄭大世は「自分の人生をかけて、どんなことが起こっても、どんな状況になっても、自分を信じてやるだけ」と言葉に力を込めた。
 そう、言うとおり、勝たないことには始まらない。逆に言えば、勝てば“奇跡”が起こる可能性がある。川崎Fイレブン、サポーター、関係者はまさに一丸となり、柏戦に“全身全霊”をかける。
(取材・文 近藤安弘)

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