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良くも悪くも"独壇場"、鄭大世は「自作自演」と苦笑い

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[10.17 J1第29節 大宮2-3川崎F 埼玉]

 PKを獲得し、PKを失敗し、スーパーゴールを含む2得点。「自作自演」と苦笑いしたFW鄭大世の“独り舞台”で、川崎フロンターレが3連勝を飾った。

 始まりは前半14分だった。鄭が倒されて獲得した1本目のPK。ところがFWジュニーニョのキックは左ポストに弾かれた。7分後にジュニーニョが汚名返上の先制点を決めると、今度は前半36分。またしても鄭がPA内で倒され、この日2本目のPKを獲得した。

 チーム内でPKのキッカーはジュニーニョと決められていた。しかし「俺が2本取ったし、1本目にジュニーニョが失敗していた。俺もFWだし、強く主張した。あの状況で俺が蹴っても誰も文句言わないでしょ」と鄭が強硬にキッカーを志願。不服そうな表情を浮かべるジュニーニョを横目に蹴ったPKは、しかしGK江角浩司の左手に阻まれた。

 「信じられなかった。アンビリーバブル。申し訳ない気持ちでいっぱいだった」。しかも前半ロスタイム、DFマトにお返しのPKを決められ、1-1の同点に追い付かれた。

 「負けたり引き分けたりしたら完全に俺のせい。俺のせいで流れが悪くなったし、必死だった。名誉挽回のゴールを決めたかったし、その気持ちが通じたゴール。気持ちだけ。失うものは何もなかったから」

 失点直後だった。前半終了間際に鄭の左足の弾丸ミドルが炸裂。PKよりも数倍難易度の高いスーパーシュートを叩き込み、再び2-1と勝ち越した。

 ハーフタイムには怒りのおさまらないジュニーニョに平謝りしたという。「俺が一辺倒で謝った。外したんでね。向こうも気に入らないだろうし、チームにも迷惑をかけたんで」。

 PKをめぐり衝突した2人だったが、ピッチ上では好連係も見せた。後半19分、ジュニーニョのパスを受けた鄭がマトを弾き飛ばし、左足で追加点。「試合の中ではお互いプロフェッショナルだし、互いの活躍、チームの勝利に向かってしっかりプレーできた。3点目もジュニーニョへの恩返し」と感謝していた。

 両チームに2本ずつ計4本のPKが与えられた乱戦(過去最多PK試合は02年7月27日の千葉対磐田で1試合5本)を制したのは、2回ともPKを失敗した川崎Fだった。「勝負強さが課題だったけど、今までと違うところを見せられたと思う」と鄭。大混戦の優勝争いを抜け出すのはどこか。MF中村憲剛は「どうなるか分からない試合で勝ち点3を取り切って行くことが大事」と確かな手応えを口にしていた。

<写真>川崎F・FW鄭
(取材・文 西山紘平)

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