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川崎F準V、日本一の夢はまたも幻に

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[11.3 ナビスコ杯決勝 F東京2-0川崎F 国立]

 試合終了のホイッスルとともに日本代表MF中村憲剛が腰に手をつき、DF伊藤宏樹がピッチに座り込む。途中出場のMF田坂祐介はピッチに仰向けになったまま動くことが出来ない。初Vを狙い0-2で敗れた川崎Fは、そのショックをすぐに拭い去ることができなかった。

 00年、07年に続く3回目のナビスコ杯決勝敗戦。06年、08年のリーグ戦2位などあと一歩での準Vの歴史を変えたかった。だが、初の日本一への夢はまたも叶わなかった。

 今季2戦2勝のF東京との決勝。現在チームはリーグ戦4連勝中で直近の広島戦は7-0で快勝していた。否が応でも初Vへの期待は高まった。やや入れ込み気味に試合に臨んで敗れた2年前の決勝(対G大阪戦)と違い、浮ついた感じも全くない。平常心で試合に入り、優勢に試合を進めていた。

 だが、チャンスをつくりながら先制点を奪うことが出来ない。前半19分に迎えたビッグチャンス。FWジュニーニョのスルーパスで抜け出しGKと1対1になったMF谷口博之のシュートはF東京・権田修一に阻まれ、こぼれ球を拾った谷口のラストパスからフリーのジュニーニョが放った決定的な右足シュートは、クロスバーの上を越えていった。

 そして、攻め込みながら迎えた22分にF東京MF米本拓司が放ったややコースの甘いミドルシュートを名手・川島永嗣が「正面からブレてきて合わせようとしたけど」はじき出せず痛恨の失点。この1点がチームに重くのしかかった。
 計12本のCKと17本のシュート、クロス、個人の突破で相手ゴールへと襲い掛かったが、攻めども、攻めどもF東京の堅い守りに跳ね返されてゴールを破ることができない。
 また、ボールをお見合いする場面やドリブルでタッチラインを自ら割ってしまう場面もあるなど、集中力や冷静さを欠いたようなプレーもあった。2点目を失ったあとの後半25分からは本来中盤の田坂を右SBに入れたほか、MF谷口博之が前線に張り付くなど何とか1点を目指したが、打開策も実らなかった。

 ナビスコ杯決勝では00年(対鹿島、0-2)も07年(対G大阪、0-1)も完封負け。強力攻撃陣を備える川崎Fだが、今回も失った1点を取り戻すことができなかった。中村は「1点の重みを(改めて)痛感した。決勝ではこういう1点が重くなってしまう。1点入るとパワーバランスが崩れてしまう。みんなその大きさを分かっていたから、こういう試合で失点してしまったことがもったいない」と無念の表情。試合後、表彰式で歓喜を爆発するF東京の選手たちにほとんど目をやることもなく、選手たちはうつむき、視線は宙をさまよった。

 ただ、下を向いてばかりはいられない。5日後には首位に立っているリーグ戦の次節を控えている。千葉、大分、新潟、柏と戦う残り4試合を全勝すればもちろん、首位を守れば悲願が成就する。中村は「とにかく今後勝ちきること。切り替えて千葉戦に向けて頑張る」と話し、ジュニーニョは「残りの4試合を決勝戦のつもりで戦う」とリーグ戦での雪辱と歓喜実現を誓っていた。

(取材・文 吉田太郎)

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