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“新生”平山が貴重な2点目。怪物復活のきっかけに!

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[11.3 ナビスコ杯決勝 F東京2-0川崎F 国立]

 試合を決定付ける2点目を決めたのは、FW平山相太だ。後半15分、MF鈴木達也からのクロスボールに飛び込み、得意のヘディングでゴールネットを揺らした。大舞台に強いと言われる男の、真骨頂を発揮してみせた。

 「達也さんからいいボールが来たんで。決められてよかった。取った後は、早く試合が終わればと思っていた。本当に長い90分間でした」

 平山は満面の笑みを浮かべて振り返った。今季はゴール数こそ多くないが、持ち前のポストプレーとヘディングに加え、献身的な守備も身に着けて、レギュラーを獲得した。MF石川がゴールを量産していたが、石川をはじめ、チームメートから「ソウタが効いている。うまく引き出している」などと高く評価されていたほど。だが本人は、得点にこだわっていた。前日はMF今野に「ソウタが点を取ってくれると思う」と“ゴール指令”を受けたが、仲間の期待に応えた。

 このゴールを“地獄”を忘れるための、分岐点にしたい。ここ数年のサッカー人生を振り返ると、オランダリーグからの“ホームシック帰国”に始まり、FC東京での苦闘、そして08年の北京五輪代表からの落選など、かってエリート、怪物といわれた男にはふさわしくない時間が流れていった。あまり口にはしないが、悔しさを胸に秘め、汚名返上を狙った。

 北京落選を境に、心を入れ替えた。以前はオフの日などに夜遅くまで遊ぶなど“不摂生”もあったが、やめた。MF梶山も今春ごろに「ソウタは夜遊びしなくなった。みんなで遊んでいても、家に早く帰るようになった」と明かしていたほど。何より、かってはインタビューの受け応えも嫌がっていたが、今では笑顔で、自分の言葉で話せるようになっている。人間としても成長している証拠だ。

 城福監督も「彼はあるタイミングであきらかにサッカーに対する取り組む姿勢が変わった。24時間の中で、サッカーをファースト・プライオリティーに置く様になった。(監督自身も)取り組む姿勢を、日々目の当たりにしてきた。彼自身、自分を変えようとしていた」と変貌ぶりを明かした。もちろん評価が高いゆえ、指揮官はまだ平山のプレーに満足はしていないが、大きな期待を寄せているのは確かだ。

 そんな流れの中で、まさに“ニュー・平山”を大舞台で披露した。「プロになってはじめてのタイトルなので、すごくうれしい。でも、この結果をしっかり次につなげていかないといけない。この後が大事ですから。もう一つ、上のレベルにいくように努力したい」。平山は地に足をつけている。ナビスコはあくまでも通過点-。そして、次のステップへ。この一発を“真の怪物”復活へ確実な足がかりとしたい。

<写真>F東京FW平山(13番)
(取材・文 近藤安弘)

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