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[高校MOM176]山梨学院大付DF藤巻謙(3年)_靭帯断裂を克服した"山梨の星"

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.5 全国高校選手権準々決勝 ルーテル学院0-1山梨学院大付 駒場]

 目の覚めるような強烈な弾道でゴールネットを揺らした。後半5分、DF藤巻謙(3年)が約25mの距離から放った弾丸ミドルが山梨学院大付(山梨)を国立へ導いた。

 「みんなで国立に行こうと話していた。自分のシュートでそれが叶ってよかった」。全国選手権のピッチに立てるだけでも幸せだった。新チームの立ち上げ時はレギュラーだった藤巻だが、昨年6月、左足首の靭帯断裂という悪夢が襲った。「何本か切れた」という重傷で、約2ヵ月間、安静にしているしかなかった。

 「一時はかなりへこんだ。でも焦らず、自分は自分にできることをやるしかないと」。懸命なリハビリをへて練習に復帰できたのは9月。しかし、そのときにはもう自分のポジションがなくなっていた。山梨県大会は2試合に途中出場したのみ。「足しても5分ぐらい」という“時間稼ぎ要員”だった。

 先発を奪い返したのは、大会直前の静岡・御殿場合宿からだった。リハビリ中にはベンチプレスなど筋トレに励み、「ちょっとガタイはよくなった」とひと回り大きくなって帰ってきた。1回戦の野洲戦では右ひざを打撲し、この日もテーピングを巻いてプレーしたが、もう2度とポジションを明け渡すつもりはなかった。

 MF碓井鉄平、MF平塚拓真らF東京U-15むさし出身者など、メンバーの大半を県外出身者が占める。先発11人のうち、山梨県出身は藤巻だけだ。入学直後は「みんなうまくて、友達になれるか心配だった」と笑うが、「スタメンに県内の選手がひとりもいなかったら、周りの目もなんだよってなると思う」と、山梨県人としての誇りが藤巻を動かしている。

 「国立は小さいときからテレビで見ていたあこがれの場所。実感はないけど、全国の人に山梨学院のことを知ってもらいたいし、感動してもらえるように頑張りたい」。山梨学院旋風はどこまで続くのか。“山梨の星”がサッカーの聖地・国立競技場でも光り輝く。

<写真>後半5分、決勝点を決めた山梨学院大付DF藤巻
(取材・文 西山紘平)

特設:高校サッカー選手権2009

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