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[高校MOM123]藤枝明誠MF小川哲生主将(3年)_献身の静岡MVP

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.6 第88回全国高校選手権静岡県大会決勝 清水商 0-2 藤枝明誠 エコパ]

 09年静岡県大会のMVPに輝いたのは、献身的なプレーを貫いたチームリーダーだった。藤枝明誠のMF小川哲生主将(3年)はこの日、空中戦の落下時に左足首をひねり後半21分に負傷退場。「(優勝したけど)個人的には悔しい。最後までやりたかった」と振り返ったが、「チームの中で1番ボールを追うこと。自分はチームに貢献したい」と前を向いて話す彼の姿勢、プレースタイルが十分に出た決勝だった。
 
 献身的にボールを追い続けた。潰れてもいいと走り続けた。そしてビッグプレーが出たのは藤枝明誠2点リードの後半6分、清水商のU-18日本代表MF風間宏希主将(3年)がDFの隙を縫ってゴール前に飛び込み、左足シュートを放つ。ゴール至近距離からの決定的な一撃。だが、小川主将の懸命なスライディングタックルがボールの軌道を変え、シュートを枠から外させた。田村和彦監督が「『やられた』というところでも、体を投げ打ってでも止めてくれる」と目を細める主将の渾身のタックル。常に危険を感知しながらチームのバランスを取り、厳しい守備を見せ続けた主将のプレーはMVPに値するものだった。

 以前はおとなしい性格だったという小川主将はコーチングスタッフたちからの厳しい言葉を浴びながら、チームをけん引する逞しい選手へと成長。準決勝での決勝ゴールに続き、この決勝でも体を張ってチームを勝利へと導いた。ただ、MVP受賞は本人にとって意外だった様子。「(自分じゃなくて)安東や藤原、辻がいる。なぜ選ばれたのかわからない。実感ない」と不思議がっていたが、「(MVP選出を)迷わず決めた」という指揮官からの信頼と評価は絶大だった。

 試合終了の瞬間、ピッチにいることはできなかったが素直にうれしい気持ちになれた。ただ、チームの10番、そして主将は「静岡県MVP男」の肩書きが加わり、プレッシャーもやや感じている表情。それでも、全日本ユース選手権では守備で8強進出に貢献したという自負がある。チームの中での自分の役割は分かっている。創部27年目で初めて得た全国選手権でも自分のスタイルを貫き、ひたすら走りまわるだけだ。
 
(取材・文 吉田太郎)

特設:高校サッカー選手権2009

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