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[天皇杯]遠藤が全得点に絡む大活躍。「W杯でもクラブでも良い結果出す」

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[1.1 天皇杯決勝 G大阪4-1名古屋 国立]

 今年も最高の正月になった。ガンバ大阪が昨年に続いて2連覇を達成した。Jリーグ発足後としては85、86回大会(05、06年度)の浦和以来2チーム目の快挙だ。ピッチ中央では選手、指揮官、スタッフが肩を組んで円を作り、ダンスでも踊るかのようにグルグルと回って喜び合う。アジア3位として迎えた“西の王者”は今季、リーグ戦、ナビスコ杯、ACLと苦渋をなめてきただけに、喜びもひとしおだった。

 「今季はここまでタイトルがなかったのでほっとした。G大阪のスタイルを貫いたことがよい結果を生んだと思う。選手たちが頑張ってくれた」

 西野朗監督の表情も誇らしげだった。守護神・藤ヶ谷のインフルエンザによる欠場、DF高木の出場停止と守備陣は決してベスト布陣ではなかった。相手に押し込まれる時間も続いた。しかし、ひるまない。G大阪らしい攻撃力で4得点を奪った。牽引したのは日本代表MF遠藤保仁だ。決勝ゴールを含む2得点1アシスト1起点と全得点に絡む活躍を披露した。

 「(決勝ゴールは)パスの選択肢もあったけど、いい流れでドリブルできたので左足を振り抜いた。本来の出来ではなかったけど勝てて良かった。今シーズン(09年度)最後に一つタイトルが獲れて良かった。2010年をいいスタートが切れて良かった」

 1-1で迎えた後半32分、右サイドでボールを受けた遠藤は、中へとドリブルで仕掛け、オランダ1部・VVV移籍が決まったDF吉田麻也、DFバヤリッツアを抜き去って左足を一閃。華麗にかつ豪快な一撃で、反撃ムードだった名古屋を沈めた。

 前半6分のFWルーカスの先制弾も遠藤が起点となっていた。そして、この決勝ゴール。だが活躍は、これだけにとどまらない。

 続く後半41分にはPA右でMF二川からパスを受け、そのままシュートを打てるエリアだったが、「GKが楢崎さんだったから、甘いと止められる」と判断。一度軽くキックフェイントを入れて、走り込んでいた二川に横パス。相手をあざ笑うかのようなアシストを披露した。後半ロスタイムには右サイドからDF加地のクロスを胸トラップで落とし、ボレーシュート。名古屋の息の根を完全に止めた。

 まさに新春から圧巻の“ヤット・ショー”。名古屋DF吉田麻也も「遠藤選手にやられた感じ。ぼくもバキ(バヤリッツア)も交わされたらノーチャンス。ああいうところで決めるのが代表選手ですね。うまかった」と肩を落とすしかなかった。

 「この試合でいなくなる人たちのためにも勝って締めくくりたい」

 前日、こう宣言していた遠藤。3季ぶりの無冠で終われないうえ“去りゆく人”に歓喜のはなむけをしたい思いがあった。今季限りでこの日先発したGK松代直樹が引退し、同い年でユース世代から代表でも戦ってきたFW播戸竜二が退団する。お世話になった大先輩、苦楽をともにしてきた戦友を最高の形で送り出したかった。

 そして、天国の恩人にも捧げたかった。親会社パナソニックの松下正幸副会長の夫人、昌子さん(享年56)が、がん性腹膜炎のため昨年12月22日に亡くなった。昌子さんは前身の松下電器サッカー部時代からチームを支えてきた恩人。G大阪になってからも試合を観戦したり、選手を食事に連れて行くなど気にかけていた。遠藤も何度もエールを送られ、食事をごちそうになった。遠藤はゴールのあと、左腕に付けていた喪章を触って、人差し指を高々と天に突き上げた。

 決してそういう“浪花節”は口にしないクールな男だが、「とてもお世話になった方だし、ママのためにも優勝したかった。しっかりその結果が出せてうれしく思う」と感謝を口にしてみせた。

 「ガンバは1つのタイトルで満足してはいけないチーム。来年は一つでも多くのタイトルを取りたい。今年も毎日毎日、努力して、W杯でもクラブでも良い結果を出していきたい。CWC(クラブW杯)にもチャレンジしたい」

 遠藤はさらなる目標を口にした。2010年は、鹿島に3連覇を許しているリーグ戦はもちろん、南アフリカW杯、そして2度目のアジア制覇→CWCでの世界一という野望を抱く。遠藤の右足には多くの使命と期待がかけられているが、今年もクラブでも代表でも、ファンに歓喜をもたらしてくれるはずだ。

<写真>G大阪MF遠藤の勝ち越しシュート
(取材・文 近藤安弘)

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