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[高校MOM151]八千代FW磯部晃(3年)_医学部目指す満身創痍のスーパーサブ

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 旭川実1-2八千代 市原臨海]

 八千代(千葉)の“切り札”が、値千金の決勝点を奪った。FW磯部晃(3年)は後半23分、先制点のFW大和久弘樹(2年)に代わってピッチへ。その1分後、MF長澤和輝(3年)のスルーパスに抜け出すと、左足で冷静に流し込んだ。「大和久でボディブローを打って、磯部のカウンターアタックで仕留める」(砂金伸監督)。八千代の必勝パターンがはまった。

 「やっと恩返しできてよかった」。千葉県大会準々決勝で報復行為による退場処分を受けた磯部は準決勝、決勝が出場停止。「みんな頼むという気持ちだった。まだみんなとサッカーがしたかった」。磯部の願いは通じ、八千代は激戦区の千葉を勝ち上がってきた。

 「先発からの方がやりやすいけど、自分のプレースタイル的には途中出場の方がいいんだろうし、チームのためになればと思っている」。自分も一緒に全国に連れて行ってくれたチームメイトのためにも、スーパーサブとしての役目を全うした。

 高校3年間はケガとの闘いでもあった。高校1年の冬に左ひざの前十字じん帯を損傷し、2年の夏までサッカーができなかった。2年時の選手権も県大会直前に左足首を負傷し、手術。ベンチに入ることもできず、チームも県大会決勝で敗れた。

 さらに今年の夏にも左手首を痛め、手術を受けた。県総体も未出場。夏休みが明けるまでリハビリ生活が続いた。砂金監督は「身体能力が高すぎて、コントロールできないんじゃないか」と言うが、ケガに苦しみ続けた高校生活最後の大会で見事に花を咲かせた。

 サッカー部ではめずらしい理系コースという磯部は、宿舎にも参考書を持ち込み、時間を見つけて勉強しているという。希望は医学部。「自分がケガが多いから、同じような人を治してあげたい」と、その理由を明かした。

 とはいえ、「勉強はしているけど、今はサッカーがしたい。今年はサッカーをやって、勉強は来年でもいい」と今大会にかける思いは人一倍だ。浪人覚悟で打ち込むサッカー。頂点に立つまで、俊足を飛ばして駆け抜ける。

<写真>八千代FW磯辺
(取材・文 西山紘平)

特設:高校サッカー選手権2009

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