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[高校MOM158]矢板中央MF渡辺光(2年)_苦境の中で結果を出したスーパーサブ

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特設:高校サッカー選手権2009

[1.2 全国高校選手権2回戦 矢板中央 1-0 近大和歌山 駒場]

 両者ともガッチリと守備を固め、決定機が皆無に近いジリジリとした展開が前半からずっと続く。そんななか、後半から出場して決勝弾をマークしたのが「県大会からずっとスーパーサブ」と矢板中央・高橋健二監督が暑い信頼を置く切り札、MF渡辺光(2年)だった。

 値千金の決勝ゴールが生まれたのは25分、FKのロングボールを1年生FW石井涼斗が競り合って落とすと、こぼれ球にいち早く反応して冷静に押し込んだ。「折り返しを信じて飛び込んだ」というシュートはこれまで何度もトレーニングしてきた形。「決めてやる」と強い気持ちを胸に抱いて後半から大舞台に立った渡辺光は見事にスーパーサブの役割を果たしてみせた。

 この晴れ舞台に立つまで、渡辺光は人並み以上の苦労を強いられてきた。

 中学3年生の時、股関節にスポーツヘルニアを発症し、手術に踏み切った。中学卒業時、次の進路に選んだのは静岡の名門・静岡学園だったが、夢を持って入学した静岡学園で股関節の故障が再発。治療とサッカーを両立させるため、高校1年の11月に地元の矢板中央に転校することを決断。だが、新天地の矢板中央でも障害が待ち受けていた。今年の春から夏にかけて左足首、じん帯を損傷し、インターハイ予選を戦えなかった。

 実は股関節はまだ完治していない。今でも痛みを感じながらプレーしている。シュート練習になると、集団から一人だけ外れてストレッチに励み、入念なケアを行う毎日。まだ1試合を通して戦える状態にはない。

 「短い時間しかプレーできないので結果を残せてよかった」。他の誰よりもプレーできる幸せを知るスーパーサブは、ここ一番で大きな仕事をやり遂げ、矢板中央を初のベスト16へと導いた。

(取材・文 神谷正明)

特設:高校サッカー選手権2009

 

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