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[高校MOM173]広島観音DF小林祐輝(3年)_魅せた高速クロス! 悔しさをバネに奮闘

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 高校選手権3回戦 広島観音1-0尚志 等々力]

 試合終了のホイッスルが鳴り響くと、自然と笑みがこぼれた。90分出場できたうえ、アシストまでできた。広島観音の左SB小林祐樹(3年)だ。後半10分、左サイドをドリブルで仕掛けて速いクロスを入れ、FW山本邦彦(2年)の決勝ヘッドをアシストした。

 「練習しているクロスが出せた。いいところに蹴れたし、いいところに走ってくれた。チームの勝利に貢献できてよかったです」

 サッカーは点を取るスポーツだけに、当然、FWの山本も評価したい。結果だけを見れば、MOMは山本だったかも知れない。しかし、小林の奮闘は大きかった。腐らず、努力を続けた成果が現れ、大舞台でチームの勝利に貢献したからだ。
 
 背番号は2だが、レギュラーではない)寨芟ず袴Bのレギュラーは背番号10の岡崎和也(3年)が務めている。2回戦で右足を打撲したため、この日は欠場した。広島観音はチームメートで話し合って先発を決めるが、指名されたのは小林だった。告げられたのはこの日の朝だったが、前夜から出場をイメージし、気持ちを乗せていた。

 よくある“代役”が奮闘したという話ではない。もともとは、小林がレギュラーだったからだ。利き足こそ違うが、たとえるなら日本代表DF長友佑都のように、豊富な運動量とスピード、積極的な攻撃参加を武器とする。1対1にも強く、積極果敢なプレーで左サイドを守っていた。

 しかし、昨夏のインターハイ後、状況が一変した。昨今の「サイドバックがゲームを作る」の流れから、小林よりもキープ力、パスセンスのある岡崎が、左の攻撃的MFから配置転換された。小林は左SBと左MFの控えに回った。

 悔しい思いは胸にしまい、練習に邁進した。左MFをやることはプレーの幅を広げるはずだと、前向きな姿勢で取り組んだ。プレミアリーグなどを見て、徹底的に速いクロスを研究した。この日のアシストにつながった左からの速いクロスは、まさに積み重ねてきた練習の成果だった。

 守備でも魅せた。尚志は後半9分から怪我を抱えるエースFW渡部圭祐(2年)を途中起用。主に右サイドからのスピードあるドリブルを武器とするストライカー。怪我人とは思えないプレーで、2回戦の東北戦でもゴールを決めていた実力者だった。だがそこで、小林の脚力が生きた。体を張って守り、ゴールを許さなかった。

 畑監督も「もともと能力は高いので、心配していなかった。小林はスピードがある。結果的に20番(渡部)が出てきて、小林を左SBに置いといてよかった」と高く評価した。

 「もっとクロスを上げて勝利に貢献したいです。次も試合に出られたら頑張りたい」と小林。現状では次戦で先発かどうかは不明だ。岡崎が復帰する可能性が高い。だが、こういう選手がベンチに控えるのは、チームとしても大きい。広島皆実に次ぐ“広島県勢連覇”は、小林のような選手の存在がキーになるだろう。

<写真>広島観音DF小林
(取材・文 近藤安弘)

特設:高校サッカー選手権2009

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