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[高校MOM179]山梨学院大付MF碓井鉄平(3年)_借りはまだ半分返しただけ

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.9 全国高校選手権準決勝 矢板中央0-2山梨学院大付 国立]

 自分でも驚く弾道だった。1-0の後半40分、山梨学院大付のMF碓井鉄平主将(3年)のひと振りが試合を決めた。FW伊東拓弥(3年)のパスに走り込むと、右足をダイレクトで振り抜く。完璧にミートしたボールはGKの手の横を抜け、左のサイドネットに突き刺さった。

 「逆サイドに打とうというイメージはあったけど、あんないいシュートがいくとは思わなかった。自分でもビックリ。あんなシュート、決めたことない」

 前半34分の先制点も碓井が起点になった。伊東のスルーパスから右サイドを抜け出し、角度のない位置から右足でシュート。「相手はブロックをつくって引いていたから3人目の動きが効くのは分かっていた。スペースがあったので、そこに入って。シュートは入らなかったけど、鈴木がつめてくれていてよかった」。いったんはGKに弾かれたが、こぼれ球をMF鈴木峻太(3年)が押し込み、先制のゴールを奪った。

 2点に絡んだが、本人の表情は不満げだった。矢板中央に押し込まれる時間も長く、山梨学院らしいパス回しをなかなか見せられなかった。「ミスが多くて、攻撃のリズムを壊してしまった」と反省の言葉が続いた。

 初出場で初の決勝進出。あと1勝で、全国の頂点に立つ。それも碓井にはまだ実感がないようだった。「自分は野洲戦で終わると思っていた。先制されて、ああダメなんだなって」。昨年12月31日の1回戦・野洲戦は前半9分に先制点を許す苦しい展開だったが、そこから4-2と逆転勝ちし、勢いに乗った。「みんなが頑張ってくれて。みんなに勝たせてもらった」とチームメイトに感謝した。

 国立競技場にもいいイメージはなかったという。「国立は運が付いてないと思っていた」。F東京U-15むさしに所属していた中学3年時、高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権で決勝に進出し、国立でプレーしたが、FW宇佐美貴史擁するG大阪ジュニアユースに延長戦の末、敗戦。「また負けちゃうかなと思ってた」と自虐的に笑った。

 ここまで無欲に、目の前の一戦一戦を戦ってきた。それでも、決勝で負けたら意味がない。「少しは借りを返せたけど、次、勝たないと。まだ半分ですね。ここまで来たらあと1勝。勝ちたいですね」。ポーカーフェイスの碓井の目がいつにも増して熱を帯びていた。

<写真>山梨学院大付MF碓井(7番)
(取材・文 西山紘平)

特設:高校サッカー選手権2009

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