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【連載】2010Jリーグ新天地での挑戦(2)GK北野貴之(大宮)

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 大宮をビッグクラブにする-。新潟から大宮アルディージャに加入したGK北野貴之。近年、上位クラブへと成長した新潟のレギュラーをつかんでいながら、下位クラブへの移籍という“賭け”に出た守護神だが、そこには大きな野望があった。

 「今までにない大宮アルディージャの結果を作り上げたいと思います。大宮は、サポーターともっと一緒に戦って、暖かいチーム、上位にいけるチームになると思って移籍を決断しました。たしかに、発展途上のチームだとは思いますが、(名門へ向けて)その歴史の一歩を作りたいと思います。目指しているビジョンは素晴らしいし、名門チームになれる可能性もあると思う。その第一歩の懸け橋になりたい」

 大宮を『名門クラブ』にするという、そんな高い目標を迷いまなく、きっぱりと言い切った。移籍は大きな決断だった。レギュラー選手は通常、前所属クラブよりも上位のクラブに移籍することが多いが、今回は順位的にも、サポーターの人数的にも“格が下”のクラブに移籍するというまれなケースになった。

 もちろん、新潟を名門クラブにしたかった。だが、新潟のチーム事情もあった。今オフには経営面の問題などから、主力選手が相次いで移籍した。若返りを図らなければいけない状況・・・。悩みに悩んだ。

 北野は、札幌大時代の02年に練習生として加わり、03年には新潟への正式入団を勝ち取った。着実に成長して06年にはレギュラーを獲得。近年の新潟の飛躍に貢献してきた一人だ。それだけに「第2の故郷として愛した新潟を去る決断はとてもつらく、胸が張り裂けそうな思い」と苦渋の選択だったという。

 それでも、北野に限らず選手としてはやはり、優勝を目指すクラブ、それに向けて選手補強や待遇面などで、しっかりとしたビジョンを示してくれるクラブでプレーしたいのが、本心。そんな中、2011年にJ1制覇を目標に掲げ、選手補強や施設面で“投資”をしようとしている大宮からオファーが来た。

 近年の順位から考えると、資金面は比較的豊富なほうで、親会社の“経済力”はしっかりとしている。何より、以前の新潟のように、「ビッグクラブを目指す」という熱意が北野には感じられたという。「移籍を決意した大きな理由は、大宮が示す明確な目標とビジョンが、僕のサッカーに対する情熱、ビジョンにより近く感じたから」と説明している。

 目標は、自身のプレーで勝ち点、勝利をもたらすことだ。北野は「負け試合をいかに勝ち試合にするとか、勝ち点を1でも取れるようにするというのが僕の仕事のポイント。全試合を勝ち試合にするのは難しいが、その中でいかに(勝利や勝ち点1を)引き寄せるかが、大事になってくる。そこをGKで、DF陣でもぎ取りたいと思う。それを僕の目標にしたいです」と宣言した。

 「新潟では温かい声援で、(サポーターに)愛されて戦ってこられた。(移籍は)みんながいい顔をして送り出してくれたわけではないと思う。でも、自分がより活かせるところで戦うというのが、僕のサッカー人生の考え方。それを分かってくれる方がいてくれたら・・・。とにかく、いいプレーを見せて恩返ししたい」

 同じオレンジをチームカラーとし、チームの発足やJ2で切磋琢磨してきた時代背景が同じのクラブに移籍するのは、それ相応の覚悟をしてのこと。新潟での試合では大ブーイングを受けることも覚悟している。大宮サポーターはもちろん、新潟サポーターの思いも胸に、北野は自身の“挑戦”を必ず成功させるつもりだ。

(取材・文 近藤安弘)

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※この連載では10年シーズンに新天地へ移籍した注目選手をJ1の18チームから1人ずつピックアップしていきます(新人選手は除く)

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