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【連載】2010Jリーグ新天地での挑戦(3)DF小宮山尊信(川崎F)

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 タイトルを取りたい、世界舞台へ挑戦したい。選手として、いや男として、ふつふつと燃え上がる思いが重大な決断を後押しした。

 横浜FMからお隣のライバル、川崎フロンターレへの移籍を決断したDF小宮山尊信。新体制会見では笑顔も少なめで、真剣な表情で並々ならぬ決意を口にした。

 「強い気持ちと決意、覚悟をもってこの川崎フロンターレに移籍してきました。同じ神奈川での移籍ということもあるし、マリノスはビッグクラブですし、いろいろと考えることもあった。ただ、新しい地でチャレンジしたいという気持ちになった。どこまでできるか挑戦したい」

 横浜から川崎へ。地図上ではお隣で、中心街も電車で約10分と近い距離にあるが、サッカーにおいては、ライバル関係にある都市だ。ましてやわずか在籍3年での移籍。近年の成績は別として、過去の成績や歴史、タイトル獲得数では横浜FMのほうが名門。設備面も充実している。

 それにマリノス・サポーターの思いを考えると・・・。複雑な心境にはなったが、川崎FではJリーグはもちろん、アジア、世界へのタイトルが広がっている。川崎Fフロントの熱烈なオファーにも後押しされ、大きな決断を下した。

 加入したからには、自身はもちろん、川崎F初となるタイトルをもたらす覚悟だ。クラブの福家強化本部長は2010年の強化ポイントに、ボランチとサイドアタッカーを挙げていたが、そのサイドアタッカーのキーマンが小宮山となる。つまり、タイトル奪取の鍵を握る男なのだ。「自分のいいところは、左サイドでの攻撃参加。強烈な前の選手(ジュニーニョ、鄭、レナチーニョら)と絡んで、さらに攻撃力を上げたい」と本人も自覚し、意気込んでいる。

 たしかに、川崎Fのサイド攻撃は、時折見せる3トップになった際は、ジュニーニョやレナチーニョがかなり強力な突破を見せるが、それと比べると、サイドバックからの攻撃参加は決して多くはない。既存のFW陣に加え、小宮山がサイド攻撃に厚みを持たせたら・・・。想像しただけでも、恐ろしい。

 「リーグやACLを通して、自分を成長させたい。ACLは川崎Fが楽して勝ちとったものではない。みんな(他のチームメート)以上のモチベーションで挑みたいと思う。並大抵の大会ではないと思うので、一日一日努力して、気合いを入れて臨みたい」と小宮山は言葉に力を込める。タイトルの先には、オシム監督時代に候補選手として合宿に呼ばれた日本代表もある。

 「このチームでしっかりとした力を出せないと代表にはいけないと思う。新たなチャレンジになると思う。ますは川崎Fのためにしっかりと戦って、そのあとに意識していきたい」

 川崎Fの初タイトル、アジア制覇、クラブW杯、自身の日本代表・・・。小宮山が見据える目標は尽きない。あの強力攻撃陣に、サイドアタッカーがどんなスパイスを効かせるのか。中村憲剛、稲本との融合はどうなか。ファンならずとも今から、ドキドキ、ワクワクせずにはいられない。

(取材・文 近藤安弘)

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※この連載では10年シーズンに新天地へ移籍した注目選手をJ1の18チームから1人ずつピックアップしていきます(新人選手は除く)

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