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【連載】南アフリカへのサバイバル(6)MF阿部勇樹(浦和)

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 あえて激戦区で勝負する。MF阿部勇樹(浦和)は鹿児島・指宿合宿からボランチに固定された。昨年までは6月のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦でもセンターバックで先発するなど最終ラインでの起用が目立ったが、W杯イヤーを迎え、本職のボランチでアピールを続けている。

 「ジェフのときからずっとボランチをやっていて、チームの関係でいろいろやったけど、ここ(ボランチ)で勝負したいなというのはあるし、そういう気持ちは捨てずにやっていきたい」

 岡田武史監督とポジションについて特別な話はなかったというが、浦和でも昨季からボランチで起用されていることも関係はあるだろう。センターバックの3番手にDF岩政大樹(鹿島)が台頭してきたこともある。ただ、“押し出された”というネガティブなイメージはない。

 「(センターバックで)練習をやっていないからと言って、準備を怠っているつもりはないし、いろんなポジションができるのは強みにもなると思う。それに、ボランチは自分がやっていきたいポジションだから」。ボランチはMF遠藤保仁(G大阪)、MF長谷部誠(ボルフスブルク)、MF稲本潤一(川崎F)がひしめく激戦区。さらにMF小笠原満男(鹿島)もクラブではボランチが本職だ。最激戦区とも言えるが、自分が「勝負したい」ポジションで挑戦している現状をあくまで前向きに捉えている。

 浦和との3年契約が満了した今オフは去就問題も揺れた。かねて欧州志向の強かった阿部には複数の海外クラブが興味を示し、欧州の移籍市場が閉まる1月末まで海外移籍を模索していた。浦和残留が正式に決まったのは、指宿合宿中の1月30日のこと。ぎりぎりまで交渉が続くなど周囲はなかなか落ち着かなかったが、翌31日のリラクゼーションを兼ねた練習では弾けるような笑顔も見せていた。

 「チームもしっかり決まって、目指すものがハッキリした。半年後のこと(W杯)もそうだし、クラブで海外とやるにはACLしかない。それを目指していきたい」と、気持ちはすっきりしたようだ。

 いよいよW杯イヤー。4年前はぎりぎりのところで落選するなど悔しい思いもした。オシム前監督時代はチームの中心選手としてプレーしていたが、今は当落線上の立場。W杯には特別な思いも―?

 「それ(W杯)をゴールと決めたら、そこで終わってしまう。その先、どうするかを考えていきたいと思っている。もちろんW杯への気持ちはあるけど、その先も大事だから。自分にやれることを精一杯やりながら、目標を達成したい」

 W杯を軽視しているわけではない。だが、サッカー選手としてさらに成長するために一番大事なことを見誤ってもいけない。自分自身を磨き続ける。その過程で、W杯という大舞台も、きっとやって来る。

<写真>MF阿部勇樹は練習でもコンディションの良さを見せている

(取材・文 西山紘平)

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第5回平山相太(F東京)
第4回石川直宏(F東京)
第3回佐藤寿人(広島)
第2回金崎夢生(名古屋)
第1回小笠原満男(鹿島)
※この連載では南アフリカW杯での登録メンバー23人入りを目指すボーダーライン上の選手をピックアップしていきます

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