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【連載】南アフリカへのサバイバル(8)DF駒野友一(磐田)

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 岡田ジャパンの常連でもメンバー入りを約束されたわけではない。DF駒野友一(磐田)は熾烈なポジション争いを続けている。オシム前監督時代から日本代表にコンスタントに招集され、岡田武史監督就任直後はレギュラーも務めていた。しかし、DF内田篤人、DF長友佑都という若い世代の台頭を受け、徐々に出場機会は減少。左右の両サイドバックをこなす貴重なバックアップとしての地位は確立しているものの、W杯メンバー入りに関しては危機感も強い。

 「スタメンで出ていないと、それは分からない。試合にもそんなに出ていないし、その中で特徴を出して、結果を出していかないといけない」。右サイドバックにはDF徳永悠平という新たなライバルも出現。2日のベネズエラ戦(0-0)でも、先発の座は徳永に譲った。

 しかし、結果的にアピールに成功したのは途中出場の駒野だった。周囲との連動性を欠いた徳永に対し、後半14分から出場した駒野は積極的なオーバーラップと正確な右クロスでチャンスを演出。後半37分にFW佐藤寿人に合わせたクロスはゴールの可能性を感じさせるものだった。

 それでも「あれで満足しちゃいけない」と気を引き締める。現状、先発候補を争っているのは内田と徳永。彼らを上回っていくには、もっともっとアピールを続けていくしかない。

 ただ、内田と徳永はどちらかと言うと先発型で、途中出場で流れを変えるようなタイプではない。一方の駒野は「短い時間でもチャンスをつくるためにベンチにいるときから試合の状況を見て、自分がピッチに入ったらすぐに溶け込めるようにしている」と話すように、先発でも途中出場でも安定したパフォーマンスを見せている。実際、昨年10月10日のスコットランド戦では0-0の後半36分から左サイドバックで途中出場し、短い時間で2点を演出。2-0勝利の立役者となった。

 ベネズエラ戦後、佐藤は「コマ(駒野)とはチームでもずっとやっていたし、どういうタイミングでクロスが来るかは分かる」と言っていた。広島時代のチームメイトについて駒野も「タイミングは分かっている」と声をそろえる。「(佐藤は)相手にとって嫌なFW。そこに合わせることができればチャンスは広がる」。やはりスーパーサブとしての起用が多い佐藤との“ホットライン”。流れを変えたいときの「佐藤&駒野」投入は、チームの切り札となる可能性も秘めている。

 06年のドイツW杯も経験している数少ない選手のひとりである駒野だが、W杯には悔しい記憶しかない。オーストラリアとのグループリーグ初戦に先発しながら悪夢の逆転負け。その後の2試合は出番がなく、チームが敗退するのをただ見ているしかなかった。

 「自分が出た試合で負けたというのは、勝った試合よりも記録に残る。その悔しさを晴らすのは同じW杯のピッチでしかできない。4年前とは相手も違うけど、絶対にグループリーグを突破したい」。ドイツの借りは南アフリカで返す。サイドバックのスーパーサブでもいい。チャンスさえ与えられれば、どんな短い時間でも結果を残す自信が、今の駒野にはある。

<写真>ドイツW杯のリベンジに燃えるDF駒野友一

(取材・文 西山紘平)

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第7回岩政大樹(鹿島)
第6回阿部勇樹(浦和)
第5回平山相太(F東京)
第4回石川直宏(F東京)
第3回佐藤寿人(広島)
第2回金崎夢生(名古屋)
第1回小笠原満男(鹿島)
※この連載では南アフリカW杯での登録メンバー23人入りを目指すボーダーライン上の選手をピックアップしていきます

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