beacon

混戦のD組、熱戦演じたオーストラリア&セルビアが両者脱落

このエントリーをはてなブックマークに追加

[6・23 10年W杯GL・D組 オーストラリア 2-1 セルビア ムボンベラ]

 オーストラリア、今大会初勝利も16強届かず――。10年W杯南アフリカ大会グループリーグD組最終戦、オーストラリア対セルビア戦がネルスプロイトのムホンベラで行われ、オーストラリアがFWティム・ケーヒルと途中出場のMFブレット・ホルマンのゴールにより2-1で勝利。今大会初勝利を挙げたオーストラリアだが、勝ち点4で並んだガーナの勝ち点を上回ることができず、グループ最下位へ転落したセルビアとともにグループリーグ敗退が決まった。
 
 試合終盤、互いが激しく撃ち合った情熱的な試合は終了のホイッスルとともに沈黙が訪れた。両チームの選手がともに俯き、ピッチに倒れこむ選手の姿も。セルビアの選手たちは試合終了間際に敵陣PA内で相手FWの手にボールが当たったことについて主審に激しく抗議していたが、当然判定が覆ることはなく、好ゲームを演じた両チームがともに大会を後にすることとなった。

 勝てば自力での決勝トーナメント進出が決まるグループ3位・セルビアは4-5-1システムで「決戦」に臨んだ。GKがウラジミール・ストイコビッチで4バックは右からブラニスラフ・イバノビッチネマニャ・ビディッチアレクサンダル・ルコビッチイバン・オブラドビッチ。中盤はデヤン・スタンコビッチを3ボランチの中央に右がズトラフコ・クズマノビッチで左がミロシュ・ニンコビッチ。そして両翼は右ウイングにミロシュ・クラシッチ、左ウイングにミラン・ヨバノビッチが入り、1トップは202cmの超大型FWニコラ・ジギッチが務めた。

 一方、1分1敗とグループリーグ突破へ厳しい状況のオーストラリアは主力DFクレイグ・ムーアとFWハリー・キューウェルが出場停止。ダブルボランチを置く4-5-1システムのGKはマーク・シュウォーツァー。4バックは右からルーク・ウィルクシャー、マイケル・ボーシャン、ルーカス・ニールデイビッド・カーニー。中盤センターにジェイソン・カリーナとカール・バレリが入り、右MFがブレット・エマートンで左がマーク・ブレシアーノ、トップ下にティム・ケーヒルが配置され、1トップは名古屋グランパスのジョシュア・ケネディが務めた。

 前半、攻勢に試合を進めたのは両サイドに強力なアタッカー、クラシッチとヨバノビッチを擁するセルビアだった。立ち上がりから難なく敵陣にボールを運び、決定機をつくりだす。12分にはMFニンコビッチからのスルーパスで抜け出したクラシッチがGKと1対1となり、23分には右クロスに走りこんだイバノビッチがゴール至近距離から決定的なシュートを放った。また39分には、微妙なオフサイドの判定でノーゴールとなったものの、左サイドから仕掛けたヨバノビッチからのスルーパスに反応したクラシッチがゴールへ押し込むなど、いつでも得点できそうな、どこか余裕をもった試合運びが見られた。

 だが、その前にオーストラリアの守護神、シュウォーツァーが立ちはだかる。至近距離からのシュートを1本、2本と止めて前半を無失点で乗り切ると、後半は球際で厳しい対応を見せるオーストラリアDF陣の背後をセルビアは取れなくなった。攻撃が停滞したセルビアは後半17分に早くもクラシッチを下げてMFゾラン・トシッチを投入。流れを変えようとしたが21分のMFブレット・ホルマンスコット・チッパーフィールドの同時投入により、ケーヒルを前線へ上げた2トップへ変更したオーストラリアが一気に試合を動かす。

 24分、オーストラリアは滞空時間の長い右クロスにチッパーフィールドとケーヒルが飛び込み、ケーヒルのヘディングシュートが名手・ストイコビッチの守るセルビアゴールを破る。さらに4分後にはセンターサークルでパスを受けたホルマンがドリブルで持ち上がり、そのまま右足ミドルをゴール左隅へと叩き込んだ。
 大量得点を奪っての勝利であればグループリーグ突破の可能性が高まるオーストラリアは、さらにアタッカーのMFリチャード・ガルシアを投入して攻める姿勢を貫くが逆に39分、セルビア・トシッチの左足シュートをここまで好守を見せていたシュウォーツァーが痛恨のファンブル。こぼれ球を途中出場のFWマルコ・パンテリッチに押し込まれた。

 これでグループリーグ突破へ光が差してきたセルビアもゴールを目指して人数をかけ、両チームが激しく攻め合うがスコアは動かないまま2-1で試合終了。決勝トーナメント進出の可能性を信じて好ゲームを演じた両チームに待っていたのは、ともに敗退するという無情の結果だった。

<写真>健闘を讃えあうオーストラリア・ケーヒルとセルビアのスタンコビッチ。だが両チームともに敗退が決まった
(文 吉田太郎)

W杯南アフリカ大会特設ページ

TOP