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[選手権]09年度全国4強の矢板中央敗れる!延長制した佐野日大が7年ぶりV!!:栃木

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[11.13 全国高校選手権栃木県大会決勝 矢板中央 1-2(延長)佐野日大 栃木グ]

 第89回全国高校サッカー選手権栃木県大会決勝が13日、栃木県グリーンスタジアムで行われ、昨年度全国大会4強の矢板中央と佐野日大が対戦。延長前半8分に途中出場のMF豊田祐樹(2年)が決めた決勝ゴールにより、2-1で勝った佐野日大が7年ぶり6回目の全国大会出場を決めた。

 試合終了のホイッスルとともに控え選手が一斉にピッチへとなだれ込み、ピッチに倒れこんで喜ぶ選手たちと思い思いの場所で歓喜の抱擁を繰り返す。その中でひとりスタンドへと駆け寄ったCB後藤尋明主将(3年)は控え部員のひとりから携帯電話を手渡されるとそれに向かって大声で叫んでいた。「勝ったぞー」。この日、所用により、会場へ訪れることのできなかった高瀬亮コーチに勝利を告げるとスタンドはさらに盛り上がった。

 今年の新人戦、全国総体予選ではいずれも矢板中央が延長戦の末、勝利。そしてプリンスリーグ関東2部での対戦では佐野日大が打ち合いの末に4-3で勝利していたが、昨年度全国4強のメンバーを多数残す矢板中央の壁は高かった。全国へ行くためには全国屈指の実力を備えた矢板中央に勝つしかない。それでも小林功監督は言い続けてきた。「矢板中央を倒すのはオマエらしかいない」と――。

 試合は前半、その佐野日大が主導権を握る。矢板中央は試合前日の12日練習後に大黒柱のMF渡辺裕紀主将(3年)の右足第5中足骨骨折が判明する大アクシデント。代わりのメンバーのテストも全くできないまま臨んだ試合では、代役の2年生MF田畑喜行らが奮闘するものの、佐野日大の小林監督が「中央は思っていたよりも出てこなかった」と振り返ったようにチーム全体に勢いがない。
 逆に佐野日大は高速アタッカーのFW森恒貴(3年)、多彩な足技でポイントとなったMF床井直人(2年)、右の翼の役割を担ったMF郡司博信(3年)らが次々とサイドからゴール前へパスを通す。また、苦しいクリアの続く相手からセカンドボールを次々と奪っては攻撃を展開していった。

 ただ18分の波状攻撃は矢板中央の堅いディフェンスに跳ね返され、20分に床井のパスから森が反転して放った左足シュートはわずかにゴールから外れた。そして個人技でゴールへ迫った床井の右足シュートは矢板中央GK三浦拓(3年)のビッグセーブに阻まれてしまう。
 一方、守備陣の奮闘以外ほぼいいところのなかった矢板中央だが、ゴールの予感がしないようなスローインやクロスからエースFW中田充樹やFW堀越龍也(ともに3年)がその個を生かして決定的な場面にしてしまう。

 それでも前半の試合の流れは、再三敵陣でFKを得るなど押し続けた佐野日大にあった。39分、床井の左FKのこぼれ球を拾ったMF須賀智哉(3年)が左足でゴールへと叩き込んで先制。前半ラストプレーでリードを奪うことに成功する。だが、後半やや気持ちが守りに入ってしまった佐野日大に対し、今度は矢板中央が一方的に押し込んだ。準決勝のヒーロー、MF菊池夏輝(2年)、スーパーサブの渡辺光(3年)、大型FW石井涼斗(2年)とベンチに控える多彩な攻撃カードを惜しげもなく投入。佐野日大を自陣に釘付けにすると28分には田畑の左FKのこぼれ球を拾ったMF島野一也(3年)が、芸術的な左足ループを決めて同点に追いついた。

 生き返った矢板中央は一気に決着をつけようとする。前線の高さを生かした攻撃で押し込むと、SB阿久津貴紀(3年)やCB山越康平(2年)の決定的なシュートが枠を捉えた。だが「決めきることができなかった」と高橋健二監督が残念がったように、GK長島弘昂(3年)のスーパーセーブなど佐野日大の勝利への意欲とその守りは厚く、破ることができなかった。

 1-1で突入した延長戦。ハードワークが祟ってか足を攣らせる選手が続出した矢板中央に対し、森が「相手DFの足が攣っていたのでディフェンスの背後やサイドにボールを運んで流れを持ってこようとした」と振り返る佐野日大は、相手の圧力を跳ね返すことに成功。そして再びセットプレーからチャンスをつくり続けると8分だ。PAへ放り込まれた左スローインがブロックの外側へこぼれると、後半終了間際から投入されていた豊田が右足で決勝ゴールをねじ込んだ。

 試合後、選手たちの手によって宙を舞った佐野日大の小林監督は「きょうは守備陣の粘り勝ちだと思う。毎試合失点していたチームが大きな崩れや振り回されたりしなくなった。(前回優勝から)7年というのは前回の優勝を忘れてしまう。連覇したときよりもうれしい」と笑顔。現在の3年生にとっては入学してから初めてとなるタイトルを高校最後の大会で勝ち取ることとなった。後藤主将は「3年間何もタイトルを勝ち取ることができなくて。それが矢板中央という全国ベスト4のチームを越えられてうれしい。全国では矢板中央の分まで自分たちがやらないといけない。昨年の(矢板中央が残した)全国3位という成績を越せるように。目標にしたい」と目を輝かせていた。

(文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2010

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