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[選手権]駒澤大高が全国初陣で初勝利、GK岸谷「僕たちに失うものはない」

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[12.30 全国高校選手権1回戦 駒澤大高2-1大津 国立]

 第89回全国高校サッカー選手権が30日、東京・国立競技場で開幕した。開会式に続いて行われた開幕戦では初出場の駒澤大高(東京B)と2年ぶり14回目の出場の大津(熊本)が対戦。全国大会初出場の駒澤大高が2-1で競り勝ち、国立での全国初陣で初勝利を飾った。

 戦前の予想を覆す立ち上がりとなった。全体的にプレーに硬さの目立つ大津に対し、大観衆の後押しを受けた駒澤大高が積極的に攻撃を仕掛ける。前半1分、相手のクリアミスを拾ったDF池田慶介(3年)が左足でミドルシュート。これはGKの正面に飛んだが、同7分に早くも先制点を奪った。

 左サイドからMF黒木海人(3年)がロングスローでゴール前に送ると、DFのクリアをFW須貝暁(3年)が右足でシュート。ゴール前混戦のこぼれ球をMF高平将史(3年)が右足で押し込んだ。駒澤大高にとって記念すべき全国大会初得点が貴重な先制点。前半9分にもMF山本亮太(3年)が黒木とのワンツーで右サイドを突破するなどチャンスをつくった。

 後手に回った大津だが、前半14分にMF宮本清史朗(3年)が右足でミドルシュート。GKの正面を突いたが、チームの初シュートで徐々に落ち着きを取り戻した。すると、同17分、MF佐藤寛貴(2年)からのパスをPA手前で受けたMF若杉拓哉(2年)がDFを背負いながらも強引に反転し、左足を振り抜く。豪快なミドルシュートがゴール右隅に突き刺さり、同点に追い付いた。

 その後は両チームともに見せ場少なく前半を折り返すと、駒澤大高は後半8分に右SBのDF倉本裕希(3年)に代えてMF東呈次(2年)を投入した。大会直前に右SBのレギュラーであるDF吉川大星(3年)がひざの後十字靭帯を痛めて離脱。大野祥司監督は「他のメンバーで準備ができなくて、1人では1試合もたないと思っていた。倉本でいけるところまでいって、流れが悪くなったところで2年生の東を出したら、結果的にそれが上手くはまった」と振り返る。大津のキーマンである左MFの宮本を抑えると同時に、選手交代がチームを活性化。一気に流れを引き寄せた。

 後半10分、自陣からのFKをMF長澤卓己(3年)が頭で落とし、須貝が右足ボレー。決定的なチャンスにシュートは大きく上に浮き、同12分には黒木の右クロスを東が完璧なタイミングでヘディングシュートを放ったが、これはGK松永安彦(2年)の好セーブに阻まれた。

 なかなか2点目を奪えなかったが、後半27分、相手陣内で宮本からボールを奪った黒木が右サイドから中に切れ込み、DFを1人かわして左足でゴール前にクロス。これに須貝が豪快なダイビングヘッドで合わせ、ついに2-1と勝ち越しに成功した。

 「それまでに2本外していて、メンタル的にやられていたけど、みんなから『次あるぞ』と声をかけられて。周りの声と応援のおかげです。運良く決めることができて、入ったときは『やっとか』と……」。須貝はそう苦笑いしたが、エースの一発を守り切ろうと最後までチーム全員で体を張った。

 大津は後半34分、一気に選手2人を交代。CBのDF植田直通(1年)を前線に上げ、3-5-2のパワープレーを仕掛け、猛反撃に出る。試合終了間際の後半40分にはロングボールからPA内に抜け出したMF車屋紳太郎(3年)がDF松岡聡太(3年)に倒され、PKを獲得。土壇場で絶好のチャンスを迎えた。

 キッカーは主将のDF藤本貴士(3年)。決めれば同点、そして延長かという場面だったが、右足のキックはGK岸谷紀久(3年)が横っ跳びで弾き出す。絶体絶命のピンチをしのいだ駒澤大高がロスタイムも耐え抜き、そのまま2-1で逃げ切った。

 大野監督は「初出場の初戦、国立、相手は大津と難しいことだらけだったけど、平常心で戦おうと言い続けてきた。前半は選手も落ち着いて、普段通りにやってくれて、その結果が後半の追加点につながったと思う」と喜んだ。1月2日の2回戦の相手は星稜高(石川)対徳島商高(徳島)の勝者。岸谷は「僕たちに失うものはない。次もチャレンジャー精神で勝ちに行きたい」と誓っていた。

[写真]後半27分、駒澤大高FW須貝暁が決勝点となるダイビングヘッド(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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