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[選手権]「初戦突破が目標」、前橋育英が"雑草魂"で鬼門突破

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[12.31 全国高校選手権1回戦 前橋育英4-1神村学園 柏の葉]

 第89回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、柏の葉総合公園競技場では前橋育英(群馬)が神村学園(鹿児島)に4-1で快勝し、“鬼門”の初戦を突破した。来年1月2日の2回戦では室蘭大谷(北海道)と対戦する。

 「初戦突破が目標だった」。試合後、山田耕介監督も選手も声をそろえた。08年度大会4強、昨年の全国高校総体では日本一に輝いた前橋育英。しかし、夏の王者として臨んだ前回の選手権は2回戦で香川西に敗れ、まさかの初戦敗退に終わった。1年前のリベンジへ。選手たちはたくましく成長した姿を見せた。

 立ち上がりから小気味良いパス回しでチャンスをうかがい、神村学園を押し込む。前半11分にはDF北爪健吾(3年)のロングフィードから相手のクリアミスを拾ったFW飯沼壮貴(3年)がPA内で横パス。ゴール前のMF戸内英輔(3年)にラストパスが渡ったが、シュートはミートし切れず、GKにキャッチされた。

 それでも前半11分にMF湯川純平(3年)、同16分にもMF白石智之(2年)が積極的にシュートを狙うと、同20分、待望の先制点を奪った。

 左サイドをドリブルで仕掛けた白石からマイナスのパスを受けた湯川がゴール前にスルーパス。FW小牟田洋佑(3年)は柔らかいボールタッチで前を向くと、DFのマークをかわし、GKとの1対1から冷静に右足で流し込んだ。

 先制後も攻撃の勢いを緩めず、前半27分にはPA内で戸内からパスを受けた湯川が落ち着いてゴール右隅に決め、2-0とリードを広げた。

 「初戦にはいろいろなハプニングがある。去年の初戦はビックリするぐらいめちゃくちゃだった」と山田監督は振り返る。前半22分、29分といきなり2点を先行されると、同31分に1点を返したが、その1分後に3失点目。後半に怒涛の反撃を見せるも、2-3で敗れた。

 「GKのミスで先制点を取られて、選手がイライラしている間に前半で3点取られた。冷静に戦うことが一番大切で、サッカーでミスをするのは当たり前なんだということをずっと言い続けてきた」

 チームの成長を感じさせたのは前半終盤から後半にかけての戦いぶりだった。前半35分、DFのクリアが中途半端となり、神村学園のMF小谷健悟(3年)にセカンドボールを拾われ、ゴール前にスルーパスを通された。FW平山龍之介(3年)にゴールを許し、1-2。単純なミスから1点差に追い上げられた。

 それでも、選手は慌てなかった。湯川が「前半終了間際の失点だったし、『前半はもう失点しないようにしよう、相手はロングボールを蹴り込んで来るからそこでしっかり対応しよう』と話した」と言うように、ピッチ内でチームの意思を統一できていた。MF小島秀仁(3年)も「1点入れられても、みんなで声をかけられるようになった」と強調する。残り時間、慎重に試合を進めて前半を2-1で折り返し、後半の追加点につなげた。

 後半23分、途中出場のMF松井聖也(2年)の右クロスから飯沼が右足で決め、3-1。前がかりになる神村学園の反撃を落ち着いて跳ね返し、カウンターからチャンスをつくり、同37分には小島の左CKをDF川岸裕輔(3年)が左足で蹴り込み、ダメを押した。

 今夏の県総体も準々決勝で敗れたチームにとって、これが今年初めての全国大会。小島は「僕らのチームは初の全国。失うものはないし、変なプレッシャーもない。今年は挑戦者としてやれているし、いい状態を保てている」と力を込めた。

 チャレンジャー精神で勝ち取った「初戦突破」。2回戦の相手は室蘭大谷。勝ち上がっていけば、流通経済大柏(千葉)や山梨学院(山梨)と当たる可能性もある。「この次も強いし、その次も強い」。山田監督はそう苦笑いしながらも「タフじゃないとダメですね。毎試合毎試合がタフなゲーム。でも、今年のチームは苦しい思いをしてきた分、タフさはだいぶ付いてきた」と言った。名門の殻を脱ぎ捨て、“雑草魂”で全国の舞台に戻ってきたタイガー軍団が、激戦のブロックを一歩一歩勝ち進んでいく。

[写真]初戦突破を喜ぶMF小島秀仁(中央)ら前橋育英の選手たち

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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