beacon

[MOM406]山梨学院MF荒木克仁(2年)_勝負を決めた「スペシャル」な左足

このエントリーをはてなブックマークに追加

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 山梨学院1-0駒澤大高 フクアリ]
 美しい軌道を描いたボールがゴール右上隅に吸い込まれた。山梨学院(山梨)を勝利に導いたのはMF荒木克仁(2年)の左足だった。前半30分、左45度の位置で獲得したFK。ボールの前には左利きの荒木と右利きのMF白崎凌兵(2年)が立った。
 前半24分には同じような位置から白崎が右足で狙い、GKにキャッチされていた。「2回目は1回目より内側だったので、(左足で)いけるかなと」。狙い澄ましたキックは壁の上を越え、ゴールネットを揺らした。「彼の左足はスペシャルなので。やっと出し惜しみせずに出してくれた」。2年生ボランチの鮮やかな一発を吉永一明監督も手放しで称えた。
 「中学のときから左足のキックは人より飛んでいた。それぐらいからキックを磨こうと思った」。今では全体練習後の自主練習で毎日50本のFK練習を欠かさない。「イメージ通り」の芸術FKは練習の賜物だった。
 参考にしているのは同じレフティーのMF中村俊輔(横浜FM)だ。コーチから俊輔のプレーが収録されたDVDを何度も借り、研究してきた。「4回ぐらいは借りたと思う。蹴り方は自分の蹴り方があるので、あまり見ないけど、ボールの回転を気にして見ていた。軽く蹴っている感じだった」と、左足の精度を磨き続けた。
 “急造ボランチ”がチームに欠かせない戦力になった。レギュラーに定着したのは選手権県大会の準決勝から。それまではDFの控え選手だったが、吉永監督が「何とかあの左足を生かしたかった」とボランチにコンバートした。本人は「自分は足が遅いので。ボランチなら足の早さはあまり目立たないから」と言うが、DF仕込みの守備能力の高さと左足の展開力はチーム力をさらに高めた。
 ダブルボランチを組むMF宮本龍主将(3年)は「あの左足のキックはうらやましいぐらい。守備のところでセカンドボールを拾ってくれたり、展開の面でもキックの精度が高いから上手くサイドを使えるようになった」と言う。これまで守備的なボランチだった宮本はある程度ディフェンス面を荒木に任せ、より高い位置に上がって攻撃力を発揮できるようになった。荒木のボランチ転向が二重三重の効果を発揮している。
 スタメンで2年生は荒木と白崎の2人。2回戦の国見戦で先制点を取るなど攻撃陣を引っ張る背番号10に「白崎がすごい目立っていて、自分も頑張らないとと思った」と刺激も受けている。公式戦で直接FKを決めたのは初めて。それが全国大会の決勝点となった。「やってきてよかった」。そう白い歯をこぼした荒木が連覇のカギを握っている。
[写真]前半30分、MF荒木克仁がFKを決める
(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

TOP