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[MOM407]滝川二MF香川勇気(3年)_“地味な動き”が“スーパースター”たち破る

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 滝川二2-0青森山田 西が丘]

 確かに技術では相手に劣っているかもしれない。だが鹿島アントラーズ加入内定のMF柴崎岳や日本高校選抜MF三田尚希(ともに3年)を中心とした青森山田の中盤を滝川二の背番号15が運動量で上回った。

 「相手の同じポジションにいるのはスーパースター。ボランチの勝負になったら完全に相手に分がある」。そのことは理解していた。得意の左足を武器に全国総体準優勝校のゲームメーカー役を担う滝川二MF香川勇気(3年)だが、中盤中央で対峙しているのは将来を嘱望され、今大会最も注目を浴びている実力者・柴崎。真っ向勝負で勝てるという甘い考えは抱いていなかった。
 
 それでも相手のボランチを得点に絡ませなかった。ダブルボランチでコンビを組むMF谷口智紀(3年)と連係しながら、高校ナンバー1MFと評価されている柴崎を常に視界の中に入れ、青森山田の攻撃の起点となる存在を自由にさせなかった。これまでのどの相手と比べてもハイレベルなキーマンを警戒しながら、攻撃面でも決定機に絡んだ香川。それをもたらしていたのは大きな武器としている走力だ。PA付近で相手の攻撃を跳ね返しつつ、鋭い出足でセカンドボールに絡み、加えて最前線まで走った。前半運動量の少なかった相手エースに対し、攻撃も、守備もと走り回った香川の存在は際立っていた。

 後半7分には右サイドを突いたMF本城信晴(3年)のラストパスに走りこみ、右足シュート。長い距離を走って決定機に絡んだこの場面はシュートがゴール左ポストに弾かれて得点には結びつかなかったが、それでもただ守るだけでなく果敢に前へ出るという姿勢も見せ続けた。「チャンスがあればどんどん前にいこうと考えていた。そしてきょうは無失点で、ということも考えていた。どっちもできたとき、勝敗も左右すると」。ポゼッションを高められなかった点など、本人はやや不満もあったようだが、思い描いていたものに近いプレーで勝利をもたらした。

 「疲れはいつもと変わらないですけど、きょうは特に走らされました」。警戒していた柴崎に決定機をつくられるなど、青森山田の高い技術に振り回されかけたが「青森山田というチームに勝とうという意識でやっていた」という通り勝利という任務を完遂。“スーパースター”を破った試合後、「華やかな世界の裏の地味なところで守備、運動量を評価してもらえるように頑張る」という香川の表情は充実感で満ち溢れていた。
 
(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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