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[MOM408]流通経済大柏GK緒方大樹(3年)_キッカーの表情を見て確信した勝利

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 前橋育英1-1(PK1-3)流通経済大柏 フクアリ]

 飄々と止めた。緊張もプレッシャーもなかった。流通経済大柏(千葉)のGK緒方大樹(3年)が堂々と立ちはだかった。「PKは毎日練習してきたので、自信はあった。自分が止める気持ちでいた」。1-1のまま突入したPK戦は、最初から最後まで緒方のペースで進んだ。

 先攻の前橋育英は1人目のMF小島秀仁(3年)がゴール上に外す失敗。2人目のMF湯川純平(3年)のキックを緒方が右に飛んでキャッチすると、3人目のDF北爪健吾(3年)には決められたが、「監督には『GKが1本止めてくれれば勝てる』と言われている。5本もあるので、すぐに次に切り替えた」と動じなかった。3-1とリードして迎えた前橋育英の4人目。FW小牟田洋佑(3年)のキックを横っ跳びで弾き、流通経済大柏の勝利が決まった。

 「相手の顔を見て、動揺しているのが分かった。自分の方が気持ちで勝っていた」。ボールをセットしたキッカーが助走のため後ろに下がるときの表情を見て、緒方は勝利を確信したという。「ボールから下がっていくとき、全員が動揺している顔をしていた。止められるなと思った」。精神面で完全に上回っていた。

 負けるわけにはいかなかった。前日2日の2回戦・明徳義塾戦。開始3分でDF中西孝太(3年)が左大腿部を骨折する重傷を負った。たった3分で最後の選手権が終わってしまった仲間の戦線離脱。前日夜には、緊急入院した中西からDF増田繁人主将(3年)のもとに一通のメールが届いた。

 メールには、選手ひとりひとりへ激励のメッセージが書かれていたという。ところが、緒方に対しては「特になし」の一言。「あいつに対しては自分はそういうキャラなんで。それまでみんなメールを読んで泣いていたのに、その言葉で泣けなくなった」と苦笑いしたが、「中西のためにも、試合には出られなくても、あいつを国立に連れていきたい」と力を込めた。

 国立を懸けた準々決勝では前回王者・山梨学院と対戦する。「自分が失点ゼロに抑えれば勝てる。PK戦になったら? 自信あります」。一致団結した07年度覇者。守護神がゴールにカギをかけ、“王者対決”を制す。

[写真]PKを止めたGK緒方大樹がガッツポーズ

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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