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[MOM418]滝川二GK下出晃輔(3年)_4試合ぶりの先発GKが好セーブ&PKストップ

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.8 全国高校選手権準決勝 立正大淞南0-0(PK6-7)滝川二 国立]

 4試合ぶりの先発出場を果たしたGK下出晃輔(3年)がチームを決勝の舞台へ導いた。
 
 「これは参考やから、あとは自分で判断しろ」0-0で迎えたPK戦。鎌田GKコーチから相手の情報を聞いた。「5人の内1人を止めれば、みんなが決めてくれる」そう決意して臨むと、下出は6人目のキックをストップ。ラスト9人目のキッカーには逆をつかれたが、運良く相手が外したため決着はついた。止めた本数は1本だが、ほとんどのコースは読んでいた。「コースは合っていて数cmが届かなかった」と自身も振り返るセービングは、相手選手にとって、プレッシャーとなったはずだ。そのプレッシャーが相手のミスを誘発したともいえる。

 90分間の試合の中では、大きなピンチもあった。0-0で迎えた後半43分、相手エースのMF加藤大樹(3年)がスルーパスに抜け出し、ドリブル突破を仕掛けてきた。下出は「オフサイドかと思った」と出遅れるとあっさり交わされ、加藤にシュートを許したが、これは運良く枠外へ外れていった。「完全に(ゴールを決められて)負けたと思った」というピンチも乗り越えてのPK戦だった。

 滝川二の先発GKは固定されていない。これまでの全国総体でも、GK中尾優輝矢(3年)と交互で試合に出場してきた。だからこそ今大会も、1回戦・駒場戦を下出、2回戦・鹿島学園戦を中尾、3回戦・青森山田戦では下出が出場するだろうと、自身も思っていた。しかし、3回戦、準々決勝の前日ミーティングでのメンバー発表。下出の名前は呼ばれなかった。「あれ?と思ったんですけど、ベンチでいつ試合に出てもいいように、心の準備はしていました」。そして、準決勝の舞台でようやくチャンスが巡ってきたのだ。

 この1年間はGKコーチが不在だった。だからこそ中尾と2人で、他のGK陣を引っ張って練習に励んだ。1、2年時にGKコーチに教わった過去の練習を思い出しながら実践。今大会の県予選から再びコーチが来るまでは「下級生に教えることで自分も理解できる」とコーチ役も兼任した。2人3脚でGK陣を引っ張ってきた2人で勝ち取った決勝進出だ。

 チームを初の決勝進出へ導いた下出だが、決勝の舞台に立てるかどうかは、まだわからない。それでも「出ても出れなくても中尾を信頼してるし、このチームが一丸となって戦えば負けることはない」とキッパリ話した。間違いなく出場したい気持ちはあるが、「自分の不満を出したらチームが悪い雰囲気になってしまう。全力でサポートするだけ」と前を向いた。試合に出場していなくても気持ちはひとつ。下出はピッチ内外を問わず、これまで通りにチームを引っ張り、支えていくつもりだ。

[写真]PK戦で活躍した滝川二GK下出(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 片岡涼)
【特設】高校選手権2010

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