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トップ下の大役を任された柏木。本田圭とは違う持ち味で勝利に貢献

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[1.17 アジア杯B組 日本5-0サウジアラビア アルラーヤン]

 2人目、3人目の動きを数多くこなすことで、攻撃のリズムをつくりだした。2つのゴールの起点にもなった。左足首負傷で先発を回避した本田圭佑の代わりにトップ下に抜擢された柏木陽介が先発フル出場。「自分の持ち味は叩いて走ることや運動量。このチームにはそのタイプの選手がいないので、その部分で勝負したい」と話していた通りのプレーで5-0の圧勝を演出した。

 試合前、宿舎でのミーティングで先発を言われた。シリア戦での本田圭の負傷を受け、ここ数日間の非公開練習ではトップ下でプレーすることが多かった。「(先発とサブが)混ざっていたので先発がだれなのかは分からなかった」とは言うものの、サウジ戦前日の16日には主力組でセットプレーのキッカーも務めていた。

 ある程度、予測された先発。けれどもピッチに入ると「めちゃめちゃ緊張した」。所属の浦和ではボランチでプレーすることが多かったため、トップ下は久々。キックオフ前、遠藤保仁に「ミスを恐れずに自信を持ってプレーしろ」と言われて多少気が楽になったとはいえ、ボールを失う場面は少なくなかった。

 それでも果敢に攻め続けることで得点チャンスを生み出していった。前半8分には、岡崎のポジショニングを確認して遠藤へゆっくりとした落としのパスが絶妙なタメとなり、先制ゴールにつながった。同20分には左サイドの長友へこれまた絶妙なパスを送り、前田のゴールの起点となった。

 「まだまだ。自分としては納得いっていない」と笑顔はないが、「何よりチームが勝つことが大事。チームが勝てば自分の評価につながると思ってやっている」と冷静だ。

 シリア戦翌日の14日。肉体面、メンタル面の疲れがピークに達し、練習で集中力を欠く様子が見受けられた。するとザッケローニ監督に呼ばれ、マンツーマンで話をされた。指揮官が指摘したのはモチベーションの低下。ズバリ言い当てられた柏木は「見ていてくれていることが分かったし、いいことも言ってくれた」と気持ちを入れ替えた。

 シュート練習のしすぎで左足内転筋に張りを訴えた16日は、指揮官から「練習を休め」と言われたが、「休むと体が重くなる。やらせてください」と直訴し、フルメニューをこなしている。「今の俺は向上心の塊。サッカーが楽しくてたまらない」と、ザックの魔法で意識改革が進んでいる。

 主力の休養期間に行われた昨年1月のイエメン戦で既に代表デビューを果たした形になっているが、実質は今回がデビュー戦だ。「ここから一つ一つ進んでいきたい。ここがスタートになる」と目を輝かせた。

 キープ力の本田圭とは違う特長を持つ柏木。豊富な運動量とパス&ランという持ち味で生き残りを目指す。

[写真]トップ下で先発した柏木

(取材・文 矢内由美子)

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