beacon

ケガの功名が生んだ決勝アシスト、“左MF”長友「スムーズにできた」

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.29 アジア杯決勝 日本1-0(延長)オーストラリア カリファ]

 背番号10が乗り移ったかのようだった。MF香川真司の10番のユニフォームを手に表彰式に臨んだDF長友佑都(チェゼーナ)。後半途中から本来は香川のポジションである左MFに入り、決勝点をアシストした。

 「1対1には自信を持って挑めていたし、スピードでも絶対にかわせると自信を持っていた。あとはいいボールを上げれば、点は取れると思っていた」

 延長後半4分、MF遠藤保仁からパスを受けると、左サイドを縦に突破。長友のクロスにフリーで合わせたFW李忠成の左足ボレーが優勝弾となった。

 「相手が疲れていて、ボールウォッチャーになっていたので、チュンくん(李忠成)の前に入る動きから後ろにスーと抜ける動きで決まったかな。あれですべてが決まったかなと思う」

 ケガの功名だった。後半11分、MF藤本淳吾に代わってDF岩政大樹が入ると、DF今野泰幸を左SBに回し、岩政とDF吉田麻也がCBを組み、長友が左MFに上がった。しかし、アルベルト・ザッケローニ監督の当初の狙いは今野をアンカーに置く4-1-4-1へのシステム変更だった。

 指揮官は「中盤を厚くしようと思っていた。今野はボール奪取能力が高い。ボールを奪って、早い切り替えから攻撃する展開を考えていた」と、その意図を説明する。後半6分にはいったん岩政がタッチライン際まで出て、交代の準備をしていた。ところが、ここでピッチ上の選手がベンチにアピール。今野が足に痛みを抱え、「ボランチは厳しい」と訴えたためだった。

 長友が明かす。「だれがどこに入るのかを監督と話した。今ちゃん(今野)をボランチに上げるという話だったけど、中で話し合った結果、今ちゃんを左SBにして、俺を上げる方がいいんじゃないかということになった」。選手の意思をベンチに伝え、それを指揮官も受け入れた。

 「今ちゃんがボランチはきついけど、SBならという話だったので。今ちゃんの状態を見ながら、監督もそれならしょうがないという感じだった」。これが奏功した。高い位置に入った長友は再三、左サイドからチャンスメイク。後半21分には長友の左クロスにFW岡崎慎司がダイビングヘッドで合わせる決定機をつくった。

 そして、延長後半4分に長友の左クロスから決勝点。「僕らの考えだったのでスムーズにできた」と長友は胸を張る。選手の臨機応変な対応と、そんな自主性を大事にする指揮官。ザッケローニ監督は「日本代表の監督として、彼らと一緒に戦えたことを誇りに思う」と優勝の喜びを語った。監督と選手の信頼関係。チームは文字通り1つになり、アジアの頂点に上り詰めた。

[写真]日本代表SB長友

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
アジア杯2011特集

TOP