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新背番号「9」矢島、“日本代表級”のドリブル突破で2011年川崎F初ゴール

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[3.5 J1第1節 川崎F2-0山形 等々力]

 観衆がどよめいた。山形サポーターも唖然とするしかなかった。川崎フロンターレの“日本人エース”FW矢島卓郎がチームの2011年ファーストゴールをゲットしたが、圧巻の40メートルドリブルゴール。日本代表に推薦したくなるような豪快な突破力で、相馬直樹新監督に初陣勝利をプレゼントした。

「1年の最初の試合なので、すごく気持ちが入っていた。開幕戦なんで内容よりも結果に、勝ちにこだわっていた。ゴールのシーンはうまいこと前を向けたんで、前に仕掛けようと思った。シュートまで行けて良かった。(それまで)チームもそんなにリズムが良くなかったので、多少、強引に行こうと思った」

 前半34分、矢島はゴールまで40メートル前後離れた左サイドで、うまく反転しながらパスを受けてボールを前に運ぶと、一気にトップスピードに乗った。見据えたのはゴールマウスのみ。止めに来た守備陣2人を豪快に抜き去って、右足でGK植草の股間を射抜いてゴールネットを揺らした。すぐさま、ベンチに駆け寄り相馬新監督と抱擁。「ナイスシュートと言われました」。清水から川崎Fに加入後、初の開幕スタメンに起用してくれた指揮官の期待に、さっそく応えた。

「去年や一昨年はこの時期、怪我でまともにできなかった。今年はしっかりプレーできて、試合に出れて気分が良いです」と矢島。2009年に川崎Fに加入も、過去2年間は開幕から怪我に泣かれてきた。フィジカルの強さ、強引な突破力ともに、ドイツに移籍した鄭大世を思わせるプレースタイルで期待されたが、2009年はリーグ戦2得点、昨年は同4得点と結果を残せなかった。実力がなかったわけではない。主な理由は怪我による離脱だった。

 しかし、今季はコンディションが万全で、キャンプ中からスタメン組で起用され続けてきた。背番号も「15」から、かつては元日本代表FW我那覇和樹、そして昨年までは北朝鮮代表FW鄭大世がつけていた「9」に変わった。つまり『エース』としてクラブから期待されているということ。それだけに今年は開幕から結果を出す、という思いが強かった。

 エースのジュニーニョが怪我で出遅れてこの日の山形戦を欠場した。復帰は3月下旬と見られており、矢島への期待がよりいっそう大きくなっていたが、すぐに結果を出したことは頼もしい限り。“日本人エース”として今後も前線を任せられそうだ。ただ、本人に浮かれた様子はない。「後半、個人的に足が止まっていた。チームが間延びしたのもあるけど、90分通してもっともっと動けるようにしないといけない」と課題であるスタミナに自ら注文をつけた。

「勝って喜ぶのは今日まで。次の試合に切り替えてやっていきたい。横浜FMは去年、(ホームもアウェーも)どちらも完敗(0-4と1-3敗戦)だった。すごくやりがいのある相手。頑張りたい」と早くも次戦13日の横浜FMとの神奈川ダービーを見据えた矢島。最高のスタートを切った新背番号「9」が、この調子でライバル撃破をもくろむ。

[写真]先制点を決めた矢島

(取材・文 近藤安弘)

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