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[総体]新生・市船橋、流経大柏の壁突破!7年ぶりに「全国最激戦区の夏」制す

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[6.28 高校総体千葉県予選決勝 流通経済大柏2-2(PK4-5)市立船橋 柏の葉]

 新生・市立船橋が千葉王座奪還――。平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技(秋田)千葉県大会決勝が28日、柏市の柏の葉総合競技場で行われ、昨年度全国総体王者・市立船橋と同全国高校選手権4強の流通経済大柏の強豪対決が実現。2度のビハインドを追いついた市立船橋が2-2で突入したPK戦を5-4で制し、2004年以来7年ぶりとなる夏の千葉王者に輝いた。全国高校総体の出場校はこの日まで出場する全55校が決定。7月2日に組み合わせの決まる全国大会は同28日に開幕する。

 昨年の沖縄総体で日本一に輝くなど過去4年で3度全国総体優勝を成し遂げている「夏の市船」。だが千葉予選に関しては過去6年のうち5度決勝で流通経済大柏に敗れるなど、タイトルから遠ざかっていた。出場枠が2の千葉予選においては、準決勝を勝利した時点で全国大会出場が決定。その後行われる決勝ではサブ組が起用されることもある。だがゲーム主将を務めたCB鈴木潤が「インハイには2チーム出れるけれど優勝することに意味がある。選手権のためにも大事な試合だった」と話し、昨年の全国VメンバーであるMF菅野将輝が「流経には相当勝っていなかった。絶対勝ちたかった」と振り返ったように、「千葉制覇」と「打倒流経柏」にこだわった市船橋が耐えて“全国最激戦区”千葉のタイトルをもぎ取った。

 勝者も敗者にも涙が見えたライバル対決。総監督に就いた石渡前監督に代わり、4月から名門・市船橋の指揮を執る朝岡隆蔵新監督(コーチから昇格)は「狙ってました。目標を達成できたことはうれしい限り。ここ数年勝っていなかったので『勝ちにいこう』と言っていたし、選手たちも精一杯やってくれたと思う」と監督としての初タイトル獲得を喜んでいた。

 苦しい試合だったが負けなかった。流通経済大柏はエースFW宮本拓弥がU-18日本代表候補静岡合宿参加のため不在。また同候補合宿を負傷辞退したMF古波津辰希も先発から外れていた。それでもFW田上大地主将をターゲットに素早いパスワークでボールを動かし、局面ではFW中村慶太やMF湯澤聖人が高い技術を活かして仕掛けるなど優勢に試合を進める。13分にCB中村俊貴が放った決定的なヘディングシュートがゴールライン上の相手DFにブロックされるなど、なかなか先制点を奪うことができなかったが、それでも全国屈指のタレント軍団は32分、中央で待ち構えた相手ディフェンスの頭上を越えた中村慶の右FKをファーサイドの田上主将が左足で詰めて先制点を奪った。

 対する市船橋は大会開幕直前に右足首を負傷した10年全国総体得点王FW和泉竜司主将がベンチ外で、加えて190cmFW岩渕諒も出場停止。攻撃の核を欠く市船橋は前半をシュートゼロで終えてしまう。流れの悪かったチームは後半開始からMF杉山丈一郎とFW新航希を同時投入。その中で「自分のプレーで流れを変えようと思っていた」と気合十分だったドリブラーの杉山が投入直後に結果を出す。3分、右サイドのMF大窪健生からパスを引き出した杉山は、絶妙なファーストタッチからDF間を突破して一気にPAへ侵入。そのまま右足シュートをゴールへとねじ込んだ。
 
 流経大柏はシュート数で大きく相手を上回っていたが、好守を見せる左SB小出悠太やCB鈴木ら市船橋の粘り強い守りの前にシュート数の差をスコアにつなげることができなかった。後半27分にMF菅谷大樹が放ったループシュートはゴールマウスを直撃。市船橋のU-18日本代表候補GK積田景介の好セーブにも阻まれリードを奪うことができないまま延長戦へ持ち込まれてしまった。それでも流経大柏は延長前半1分、中村慶のパスから右サイドを縦に仕掛けたFW呉屋大翔が右足シュートを決めて勝ち越したが、市船橋はその4分後、後半終了間際から出場していた菅野がゴール前で相手のパスをインターセプトし、そのまま右足でゴールへと流し込んだ。

 公式記録上でのシュート数は15-3。決定機をつくりながら突き放すことのできなかった流経大柏はPK戦で3人目の呉屋のシュートがゴール左へ外れて失敗。4人全員が成功していた市船橋は5人目のキッカーを務めた2年生DF渡辺健斗が右隅に決めて熱戦に決着をつけた。FW森崎嘉之やDF茶野隆行らと同期で全国Vも経験している35歳の朝岡監督は「負けていい試合はない」と勝利にこだわり優勝。第一歩を力強く踏み出した新指揮官は「勝つために大事なことをするつもり。(ピッチの上では)いつも同じことができる訳ではない。頭を使ったサッカーをしなければいけないと思う。相手を見極める対応力のあるチームにしたい」と目標を掲げた。

 チームの次の目標は全国総体連覇だ。千葉県大会での出場を見送られた和泉主将も全国大会の出場は問題なさそう。前年王者は優勝候補の一角として再び全国舞台に立つ。「和泉を全国へ」とチームメートから出場権をプレゼントされた主将は「出れなくて悔しかった。みんなが頑張ってくれたので、全国大会では自分が引っ張っていく」。モチベーション十分で復帰するエースの力を加える新生・市船橋が、秋田の夏でも頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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