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[MOM147]中央大FW奥山慎(3年)_ライバル&親友との対決制すも「心から喜べなかった」

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.7 総理大臣杯・準決勝 中央大2-1浜松大 長居第2]

 中央大が浜松大を2-1で下し、夏の大学日本一決定戦で30年ぶりの決勝進出を果たした。決勝点を決めたのはFW奥山慎(3年=帝京高)。1-1で迎えた前半27分、FW安柄俊(3年=東京朝鮮高)の左クロスに「どこでもいいから当たれと思って」とがむしゃらに飛び込むと、ボールは見事に奥山の頭にヒット。ヘディングシュートで決勝点を決めた。

 この一戦へ特別な思いがあった。対戦相手の浜松大には奥山の親友であり、ライバルでもあるFW村松知輝(3年=帝京高)がいた。奥山と村松は帝京高校時代の同級生。当時は村松が10番、奥山が11番を背負い、ともに一つの目標へ向かって努力していた。最後の高校選手権は1回戦で広島皆実高に敗れたが、高校卒業後も2人の親交は続いていた。

 準決勝前日には電話で話した。「お互いにいい準備をして試合に臨もう」。余計なことは話さずに電話を切った。互いに極度の負けず嫌い。そしてアツい気持ちを持っている“似たもの同士”なだけに、余計な言葉はいらなかった。

 また、初戦から2戦連続でゴールを決めている村松に対して、奥山は初戦では先発だったものの、2戦目は出場もなく、今大会ノーゴール。「ムラ(村松)は2戦連続ゴールで頑張ってるのに自分はゼロ。きょうだけは負けられない」。大事な一戦へ懸ける思いは募っていた。

 そして迎えた準決勝。奥山は先発出場を果たした。佐藤健監督は「相手の9番(村松)と高校で同級生だったし、ライバル視して絶対に点を取ってくれるだろうと思った」と起用理由を明かす。しかし、それだけが先発抜擢の理由ではない。「ここ最近で出れない時期も含めて、一番成長している。チームのために何かやろうとか、精神的な部分も技術的な部分も成長を感じる」と指揮官。奥山は、ライバルとの一戦で自ら先発の座を勝ち取り、結果を残した。

 試合後は「勝っても、心から喜べなかった。ムラ(村松)が泣いている姿を見たら……。俺と同じでめっちゃ負けず嫌いな選手。アツい選手だから、悔しい気持ちがすごく分かる」と沈痛な思いを吐露。それでも「これでムラの分まで何が何でも決勝で勝たないといけない」と力強く前を向いた。ライバル、そして親友の思いを背負って、奥山が決勝の舞台へ立つ。

(取材・文 片岡涼)
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