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[総体]初戦12連敗の新潟県勢の評価変える「実力派」現る!新潟明訓がV候補破り8強進出!!

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平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技(秋田)
[7・30 全国高校総体3回戦 新潟明訓2-1大津 西目カントリーパークサッカー場]

 新潟県代表の評価を覆すチームが現れた。秋田県で開催中の平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技は30日、3回戦8試合を行い、由利本荘市の西目カントリーサッカーパークの第2試合では優勝候補の一角・大津(熊本)と新潟明訓(新潟)が激突。DF若杉一生とMF梅沢拓磨(ともに3年)のゴールにより2-1で勝った新潟明訓が初のベスト8進出を決めた。新潟明訓は8月1日の準々決勝で08年優勝の流通経済大柏と対戦する。

 全国高校総体では昨年まで12年連続で初戦敗退していた新潟代表。全国的に“弱い”とされるイメージを吹き飛ばす新潟明訓の快進撃だ。初戦で東京王者の東久留米総合を破った新潟明訓は2回戦で開催県第1代表の西目も撃破。そしてこの日はU-17W杯日本代表CB植田直通(2年)ら擁するタレント軍団でありV候補の大津を飲み込んだ。

 シード校の大津が2回戦から登場したのに対し、新潟明訓は真夏の3連戦3試合目。相手よりも疲労していることは疑いようのない事実だった。そこで田中健二監督は本来のスタイルであるプレッシングサッカーではなく、自陣の守りを固めるリトリートの戦術を選択。ただ、強豪相手に守って耐えるだけで勝った訳ではない。指揮官は言う。「カウンターのスピードではどこにも負けない。選手たちにはボールを奪ったら『勇気を持って60m走りなさい』。『オマエたちならやれる』と言いました」。リアクションではなく、攻守で常にアクションをかける全員サッカーが最大の武器。そして「一生に一回つくれるかどうか」と田中監督が自信を見せる心と身体を兼ね備えたチームは「今年は『歴史を変えるんだ』」の意志の下、「全国制覇」で新潟サッカーを変える決意と実力がホンモノであることをそのアクションサッカーで示した。

 開始直前にスコールが振り出す中で始まった試合は、MF笹嶋龍馬(3年)がクロスバー直撃の右足シュートを放つなど、大津が自信を持って攻め込んでくる。だが相手の“要注意人物”である右MF佐藤寛貴(3年)の前方のスペースを二人がかりで塞いだ新潟明訓の守備網の前に大津は、敵陣で常に数的不利を強いられてしまう。そして12分、新潟明訓のカウンター攻撃が多彩な応援歌とパフォーマンスでチームを鼓舞していた応援団の期待に応える。右サイドから仕掛けた梅沢の折り返しに中央から走りこんでいたのは、攻撃的MFやボランチではなく右SBの若杉。突然ペナルティアークに現れた背番号6のSBが左足を振りぬくと、グランダーのミドルシュートは濡れたピッチで加速し、そのままゴール右隅へと突き刺さった。

 新潟明訓はコンパクトに保たれた、非常に統率の取れた守備で相手を離さない。徹底したスカウティングで導き出された相手の長所を消す動きも功を奏した。また「サボればやられる」ということが分かっているだけに気を緩めることはない。そしてボールを奪うと、得意のカウンターからダイナミックな突破が印象的なFW羽田拓樹(3年)らが一気にボールを推し進める。一方、0-1で前半を折り返した大津ベンチは後半開始から、FW吉田滉一(3年)とMF村上順哉(2年)を同時投入し、流れの悪い展開の打開を図った。

 吉田のスピードや精度の高いキックを放つ村上らがゴールへの圧力を強めた大津だったが後半、先にスコアを動かしたのは再び新潟明訓だった。13分、カウンターからスピードに乗った羽田が左サイドを強引に切れ込む。前半から羽田が見せていたハイパフォーマンスに危険を感じとったか、大津のCB2人がともに誘い出されると、ファーサイドへ送られたパスには「60m走れ」の指示に忠実に応えた新潟明訓の2選手の姿。こぼれたボールを拾った梅沢が「ディフェンスが必死に守ってくれて運んでくれた。絶対に決めないといけない」と鮮やかな左足コントロールショットをゴール左隅へ沈めて2-0とした。

 2点を追う展開となった大津は後半20分頃から空中戦で圧巻の強さを見せる185cmの植田を前線へ上げてパワープレー。すると23分には村上の右CKからFW若杉拓哉(3年)が追撃のヘディングシュートを決める。これで1点差。畳み掛けたい大津は植田をターゲットに次々とロングボールを放り込んでくる。ただ新潟明訓は170cm中盤の甲斐岳大梶山雄太(ともに3年)の両CBらが懸命に対応。それでも植田は26分に佐藤の右クロスから決定的なパスを吉田へ通し、27分には自ら豪快な右足シュートを放った。

 必死に守る新潟明訓だが、田中監督は「やられてもいいから3点目を取りにいけ」の指示。カウンター攻撃を繰り返し、MF小熊渚音(3年)のシュートなど3点目をもぎ取りに行った。ただ相手が人数をかけて守ってもこじ開けることができるだけの攻撃力を見せる大津は波状攻撃を繰り出す。そして34分にはFW豊川雄太(2年)がPA中央で前に立ちはだかるDFを個人技で突破し決定的な右足シュートを放った。ただこれは無情にもゴール右ポストを直撃。ロスタイムにもあきらめず攻め続けた大津だったが、最後まで同点ゴールを決めることはできなかった。

 試合終了の笛が鳴った瞬間は身体中で喜びを表現した新潟明訓。ただその余韻に浸ることもなく、すぐに気持ちを切り替えていた。決して浮かれない「勝者のメンタリティー」も備えるチーム。終盤圧倒的に攻められながらもV候補を撃破した喜びは大きかったはずだが、上を目指すチームはすぐに次の戦いを見据えていた。FW小島夏輝主将(3年)は「大津は今まで新潟県勢が一度も勝ったことのないチーム。新潟のプライドをかけて戦いました。今はまだ勝ったという実感は沸かないし、不思議な気持ち。でもきょう勝ったことで自信になった。ベスト8の周りは有名な高校ばかりで、自分たちは『どこだ?』と思われている高校だと思う。周りは自分たちが1回戦で負けると思っていたと思うけど、見返したいし、優勝して全国に名を広めたい」。

 この日の先発11人中8人はFC五十嵐ジュニアユース時代にアルビレックス新潟ジュニアユースと北信越大会や新潟県大会で死闘を演じ、全国に近づいた世代だという。その選手たちが「同じメンバーで全国へ行きたい」と集まって同じ目標のために成長。そして新チームとなった今年は全国制覇を掲げ、地元・新潟国体出場世代が最上級生となった熾烈な新潟県予選を勝ち抜き、全国で旋風を巻き起こしている。理解力と吸収力の高い、頭脳的な選手が多いことも監督が評価する所以。またスピード、持久力など個々のレベルの高さにも自信を持つが、それでも準々決勝で対戦する全国屈指のタレント軍団・流通経済大柏に比べると個々の能力は劣るだろう。ただ彼らは「旋風」で終わるつもりなど毛頭ない。それをここから先の「本当の戦い」で示す。 

[写真]前半12分、若杉の先制ゴールを喜ぶ新潟明訓イレブン(協力 高校サッカー年鑑)
(取材・文 吉田太郎)

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