beacon

エース香川が圧巻テクニックで鮮烈2ゴール復帰

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.10 キリンチャレンジ杯 日本3-0韓国 札幌ド]

 A代表の矜持を示した。世界レベルを披露した。何よりサッカーの魅力を見せつけた。その中心にいたのは背番号10、MF香川真司(ドルトムント)だった。

 ライバル韓国を相手に、凄味のある攻撃を仕掛けた。

 まずは前半35分。右サイドでMF遠藤保仁(G大阪)が相手ボールを奪い、素早くゴール前に折り返す。FW李忠成(広島)が落としたところにピタリといたのが香川だ。トップスピードのままフェイントで相手をかわして右足シュート。「自分らしいシュートだった。チュンくん(李)はああいうのがうまいのでやりやすい」と自画自賛する一撃は見事な先制点をなった。

 圧巻のプレーはこれだけにとどまらない。2点目は後半10分。縦に速い攻撃から香川が中央をドリブルで突破し、右サイドのスペースに絶妙なパスを送る。そこへ走り込んだMF清武弘嗣(C大阪)がゴール前に折り返すと、詰めてきた香川が右足ダイレクトで蹴り込んだ。

「2点目は自分の良さが出た。ゴール前は自分の良さなので、そこはブランクは関係ない」と、パス&ランからのゴールをこれまた満足そうに振り返る香川。日本はこれで3-0とリードを広げ、勝利を決定づけた。

 因縁の試合だった。1月のアジア杯準決勝韓国戦で右足第5中足骨を骨折し、カタールから緊急帰国。アジア杯優勝の場にいられなかったのみならず、最終節で復帰するまでブンデスリーガでの残り半年間のプレー機会を失った。リーグ前半戦のMVPにも選ばれるほどの活躍で、ビッグクラブへの移籍の夢にも手が届くのではないかと思わせていた矢先の悲劇。そのとき以来の代表復帰戦に「ケガしたときは落ち込んだし、今日もどこかに怖さがあった。でも試合前にしっかりと整理して、無心にプレーすることができた」と言う。

 日本の実力を見せつけた試合でもあった。チームは6月のキリン杯で3-4-3を試して2試合連続無得点に終わっていたが、この日は4-2-3-1で多くのチャンスを作った。まさに、これぞ日本のサッカーという姿だった。

「しっかりボールをつないで、いい距離感でできていたのでチャンスの数が多かった」と話す香川について、FW岡崎慎司(シュツットガルト)は「(香川)真司が入ると、遅く攻めるところと速く攻めるところで違いが出る。真司でスイッチが入る。僕と(本田)圭佑と合わせて3つのスイッチがあって、真司の場合、それが強烈なスイッチになって相手の脅威になる」と評する。ここぞの場面でのスピード、アイデア、クオリティ、それらがいずれも図抜けているのだ。

 けれども、誰もが手放しで喜びたくなるような結果にも香川は慎重だった。

「今日はすべてのタイミングが良かったけど、アジア杯のときの韓国とは違った。韓国に3-0で勝ったということは良かったが、参考にならない。来月から始まるW杯予選は厳しい戦いになる」

 大勝にも浮かれるそぶりを一切見せない22歳。若きエースはザックジャパンの顔として高らかに復活を宣言した。

(取材・文 矢内由美子)

TOP