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105日ぶりのカムバック、水本「今まで普通だったことが幸せだと思った」

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[8.20 J1第22節 鹿島2-0広島 カシマ]

 あらためてサッカーができることの幸せをかみ締めた。5月7日の甲府戦で頭蓋骨骨折の重傷を負ったサンフレッチェ広島のDF水本裕貴が17試合ぶりに復帰。驚異の回復力を見せ、恐怖心に打ち勝ち、約3ヵ月半で公式戦の舞台に戻ってきた。

「ケガをしたときは、またこうやって公式戦のピッチに立てるなんてことは考えられなかった。僕自身にとっても、家族にとっても、大きな試合になったと思う」

 90分間のフル出場。DFとして体を張り、空中戦でも打点の高いヘディングで競り勝った。ヘッドギアを着用してのプレーだったが、「怖さもなくやれたのでそこはよかった」と胸を張った。

 試合は2失点で敗戦。「チームが勝てなかったことが残念」と何度も繰り返し、悔しそうな表情を見せたが、ここまでたどり着けたことに万感の思いもあった。5月7日の甲府戦で負傷し、救急搬送された病院で緊急手術。5月20日に退院し、自宅療養をへて6月4日からリハビリを開始した。チームの全体練習に合流したのは8月3日。7日の練習試合にも出場し、一歩一歩、階段を上ってきた。

「家から練習に行って、家に帰ってきて、家族の顔を見る。今までは普通だったことが幸せだと思った。そんなときに松田(直樹)さんが亡くなって、僕も一歩間違えたら帰ってこれなかったかもしれない。1日1日を生きることが幸せなんだと身に染みて分かった」

 前節の名古屋戦(0-3)で負傷後初のベンチ入りを果たしたが、出番はなかった。この日の先発は試合当日に決まった。「今日の午前の練習が終わったあとに監督と話をして。僕次第というか、『恐怖心はあるか?』と聞かれて『大丈夫です』と答えたら『じゃあ、スタートで』となった」。105日ぶりの公式戦。「出るからには絶対に勝とうと。いつもと同じように臨んだ」と平常心でプレーした。

「長かったですね。ここまで長く休んだこともなかったし、戻ってこれたのはいろんな人の支えがあったから。お医者さんだったり、広島というクラブに支えられて、監督をはじめ、たくさんのスタッフに支えてもらって、ピッチに戻ってこれた。これからは結果で恩返しをしていきたい」

 支えてくれた人たちへの感謝の言葉は尽きなかった。サッカー選手として、その思いをピッチで形にしていきたい。「サポーターの方にも本当に心配してもらった。今日は勝てなかったけど、今度はもっと喜ぶ顔を見たいし、一緒に喜びたい」。公式戦復帰という大きな一歩をステップに、これからたくさんの勝利をプレゼントしていく。

(取材・文 西山紘平)

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