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[MOM156]関西学院大FW阿部浩之(4年)_4ゴール!進化証明した関西の逸材

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9・23 関西学生1部後期第1節 関西学院大6-0立命館大 太陽が丘球技場B]

 関西の逸材がその進化を印象付けた。関西学院大のFW阿部浩之(4年=大阪桐蔭高)はガンバ大阪加入内定の決まっている注目のアタッカー。左右両足から繰り出すパスとドリブル突破を武器に10年U-21日本代表や全日本大学選抜に名を連ねるなど、関西地区を代表するMFとして高い評価を得てきた。

 だが2トップの一角として先発したこの日は「ウリにしていかないといけないと思っている」というゴールで強烈なインパクト。前半19分にゴール前のこぼれ球を豪快なボレーシュートでゴールへと叩き込むと、36分には左CKのこぼれ球をファーサイドで拾い、身体で相手をブロックしながら右足シュートを押し込む。そして後半には左右両足でそれぞれ1ゴール。ドリブル、パスでも別格のプレーを見せ続けてきたサッカーセンスの塊は、ゴールという武器も加えて、まさしく止めることのできない存在だった。

 阿部は9月に入ってからG大阪への練習参加。トップチームの中に入ってプレーしてきた背番号10は、この日周囲とのレベルの違いを見せ付けた。本人も自覚していた変化。それはゴールを連発した結果よりも、「相手を見るということ」「より的確な判断をすることができるようになったこと」だ。これまでならば相手のプレッシャーをプレッシャーと感じていた距離が、プレッシャーに感じなくなった。よりDFを引き付けた状態で、ギリギリまでプレーの選択をすることができるようになった。4ゴールを決めてやや高揚していた阿部だが、それ以上に研ぎ澄まされていた感覚に手ごたえを感じている様子だった。

 印象的だったプレーがある。2ゴールを決めた後の36分、縦パスを引き出して抜け出した阿部はシュート体勢に入ったが、咄嗟に左後方からスライディングしてきたDFを切り返しでかわすことを選択。DFを飛び込ませてかわしてから放ったシュートはGKの好守とクロスバーに弾かれてゴールとはならなかったが、プロでのトレーニングの成果を示すワンプレーだった。「多分あのままシュートを打ってもDFに当たっていた。全然納得はしていないけれども、大学生だったらイメージ通りにできるようになった。この感覚を研ぎ澄ませていければいい」。

 G大阪では仕掛けの部分とフィニッシュの部分では手ごたえを感じたが、当初は見える範囲が狭かったという。「最初全然周りが見えなくて焦っていた。中盤に限らずみんな上手かったし、やりながら感じるものがあった。意識して盗もうとしてきた。奥(ピッチ全体)までは見えなかったけれど、徐々に見えるようになってきている」。

 この日はJ1で首位を走るG大阪への練習参加直後だったことでまだ余裕が持てたのかもしれない。それだけに時間が経過しても同じ感覚を持ち続けることができるか。そして「続けられたら本物だと思う」というゴールラッシュでその存在をよりクローズアップすることができるか。「インカレ(全日本大学選手権)は全国へ行くこと。関西1位も取りたいし、日本一も取れたらうれしい。そしてガンバへ入ったときにはもうプロとしての一歩は始まっていると思う。出遅れないように、戦力として考えてもらわなければいけない。伸ばしていかなければいけないところは理解しているので考えながらやっていくだけ」。

 ここからプロ入りするまでの半年間が大事なことは分かっている。より精度を高め、Jレベルの感覚を意識しなければならない。大学サッカー界では流通経済大のDF山村和也とDF比嘉祐介、GK増田卓也のU-22日本代表トリオらが注目される存在だが、「関西の逸材」阿部の残りの大学生活、そしてプロ1年目からも目を離すことはできない。

(取材・文 吉田太郎)

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