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[選手権予選]GK負傷離脱、10人での戦い・・・アクシデント乗り越えた東久留米総合が全国へ!:東京A

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[11.12 第90回全国高校選手権東京都Aブロック大会決勝 東久留米総合2-2(PK5-4)関東一 西が丘]

 第90回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック大会決勝が12日、西が丘サッカー場で行われ、東久留米総合が2-2からのPK戦の末、5-4で関東一に勝利。2年ぶり2回目の全国大会出場を決めた。なお、試合後のA・B代表決定抽選により、東久留米総合は東京A代表となった。

 勝利目前から訪れた窮地。全国へ行くことは本当に簡単なことではない。そのことを身をもって痛感した。ただ齋藤登監督が「とにかく自分たちで判断できる選手を育ててきた。自分たちがピッチの中で考えてやってくれたと思う」と語ったように、東久留米総合は試合終了間際からの連続失点、GKの負傷離脱、10人での戦いなど次々と訪れてきた苦難を乗り越えて、夢舞台への出場権を自分たちの力でもぎ取った。

 東久留米総合は前半19分に左SB米倉翼(3年)が獲得した左FKをエースMF佐々木翼(3年)が右足で蹴り込む。中央へ飛び込んだ両チームの選手たちの頭上を越えたボールは、GKの手の先も抜けてそのままゴール右隅へ吸い込まれた。アドバンテージを活かして自分たちのペースで試合を進めた東久留米総合は、後半16分にも右SB多田和明(3年)が自陣から前線へ送った縦パスで強引に相手CBの前へ抜け出した佐々木が、鮮やかな左足ループ。これがGKの頭上を越えて2-0と突き放した。

 ただ東久留米総合に想定外の事態。前半からのハードワークが祟ってか、後半に足を攣らせる選手が続出し、主力が一人、また一人とピッチから去ってしまう。本来FWの佐々木が初めてボランチを務めるなどして対応していたが、後半39分にCB嵐田継也(3年)が交代すると、ここから一気に土俵際にまで追い込まれてしまう。

 初めて決勝を戦う関東一はJ注目の2年生守護神、渋谷飛翔が負傷欠場。司令塔MF沓掛元気主将(3年)のゲームメークから谷中隆太、大津風輝(ともに3年)、竹本佳(2年)の3トップが動き回りながら仕掛けを繰り返すも、全体的に球離れが遅く、またトップ下のMF字羽井アハマド(2年)がアンカーのMF橋詰晃(3年)に存在を消されて前半途中に交代へ追い込まれるなど、その攻撃力を発揮できていなかった。それでも後半39分、佐々木をCBへ移動させて穴を埋めようとした東久留米総合のディフェンスラインの乱れを逃さなかった。中央でボールを持った竹本のループパスから伊東がPAへ飛び込むと、ゴール前の混戦から最後はSB村岡翔太(3年)が左足でゴールへとプッシュ。厚かった壁をついにこじ開けると、さらに40分、相手のクリアミスを中央で拾った竹本がすかさずスルーパスを送る。飛び込んだFW大村俊道(2年)のシュートは鋭く飛び出した東久留米総合GK野中優志(2年)が身体を投げ出してストップしたものの、関東一はセカンドボールをMF伊東礼央(3年)が右サイドから中央へ折り返し、これをゴールエリアの谷中が右足で押し込んで同点に追いついた。

 敗色濃厚からわずか1分で試合を振り出しに戻した関東一は、黄色と白のスタンドへ谷中が駆け込み喜びを爆発させる。一方、東久留米総合は大村と接触した野中が左足首と右太ももを負傷してプレー続行が不可能に。背番号1は足を引きずり、涙を流しながらベンチへと戻っていく。交代枠を使い切っていた東久留米総合は本職のGKを投入することができず、代わりに控えGKの背番号17のユニフォームを着たSB多田がゴールマウスに立つことになった。ここぞとばかりに一気に畳み掛ける関東一。だが、東久留米総合はここでシュートを撃たせない。

 7分にも及んだロスタイムをCB森田渉(2年)や米倉らの必死の守りで何とか乗り越えると、数的不利の延長前半も相手に完全にボールを支配されながら得点を許さなかった。佐々木は「追いつかれた時は『終わった』と思った。でも『あきらめずにやろう』と。みんなでひとつになれたと思う」。自分たちの判断でポジションを修正して関東一のパスワークに対抗。全国高校総体予選準々決勝と準決勝をともにPK戦の末に勝利して夏の東京王者となっているチームは、「PK戦まで持って行けば勝てる」と切り替え、絶対の自信を持つPK戦へ持ち込むためにゴールを守り続けた。

 10人で戦うチームメートたちの姿をピッチサイドで治療を受けながら見つめていた野中。延長前半の10分間をかけて治療した守護神が「迷惑をかけられない」と延長後半開始から再びピッチへと戻ってきた。もはや勝利への執念のみ。まともに歩くことのできないような状態だったが、それでも11人対11人の戦いに戻ったことで東久留米総合は完全に勢いを取り戻す。勝ち越すことができなかった関東一は江口誠一郎総監督が「あそこでもうひとつ頑張れるチームにならないと全国は難しい」と残念がったように、前線の選手が足を攣らせるなど攻めきれなかった。

 一方、危機を全員で乗り越えた東久留米総合は思惑通りにPK戦へ持ち込むと、MF菅谷翼(2年)が相手をあざ笑うような“コロコロPK”を決めるなど1人目の米倉から5人目のMF那珂通是(3年)まで全員が成功。最後は後攻・関東一の5人目、MF関口直人(3年)の右足キックがクロスバーを叩き、水色のユニフォームが歓喜のダッシュで「劇的すぎる」優勝に歓喜の涙を流した。

 佐々木は「久留米はまだ全国で1勝もしていない。結果にこだわって、勝つことを優先してやりたい」 と前身の久留米高時代からまだ掴んだことのない「全国1勝」を宣言した。齋藤監督が「どんな相手、どんな状況でも適切なプレーができる」という東久留米総合。度重なるアクシデントも最良の選択をしてリードを許さず、あきらめなかった都立の星が2年ぶりの全国へ名乗りを挙げた。
 
(取材・文 吉田太郎)
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